季節の指標:二十四節気(にじゅうしせっき)
二十四節気とは、春・夏・秋・冬の四季それぞれをさらに6つに分けて1年間を24等分にし、それぞれの季節を表すに相応しい名前をつけた暦です。紀元前4世紀頃に中国で農作業や日々の生活を暮らし易くするために考案されました。日本には奈良時代から平安時代頃に伝わり、人々に季節の指標として使われてきました。
【二十四節気】
季節 | 二十四節気名 | 新暦の日付 |
春 |
立春(りっしゅん) | 2月4日頃 |
雨水(うすい) | 2月19日頃 | |
啓蟄(けいちつ) | 3月5日頃 | |
春分(しゅんぶん) | 3月21日頃 | |
清明(せいめい) | 4月5日頃 | |
穀雨(こくう) | 4月20日頃 |
夏 |
立夏(りっか) | 5月5日頃 |
小満(しょうまん) | 5月21日頃 | |
芒種(ぼうしゅ) | 6月6日頃 | |
夏至(げし) | 6月21日頃 | |
小暑(しょうしょ) | 7月7日頃 | |
大暑(たいしょ) | 7月23日頃 |
秋 |
立秋(りっしゅう) | 8月8日頃 |
処暑(しょしょ) | 8月23日頃 | |
白露(はくろ) | 9月8日頃 | |
秋分(しゅうぶん) | 9月23日頃 | |
寒露(かんろ) | 10月8日頃 | |
霜降(そうこう) | 10月24日頃 |
冬 |
立冬(りっとう) | 11月7日頃 |
小雪(しょうせつ) | 11月22日頃 | |
大雪(たいせつ) | 12月7日頃 | |
冬至(とうじ) | 12月21日頃 | |
小寒(しょうかん) | 1月5日頃 | |
大寒(だいかん) | 1月21日頃 |
今は、二十四節気でいうと「秋分」です。春分と同じように昼と夜の長さが同じになる頃です。この日を境にだんだんと夜が長くなっていきます。未だ、日中は暑い日が続いていますが、何かしら朝・夕の快い風、秋の気配が皆さんにも届いていませんか?
季節の変化を香りから感じる
季節の変化を知らせてくれる、四大香木(よんだいこうぼく)をご存知でしょうか?
春:沈丁花(じんちょうげ)
中国南部からヒマラヤを原産とする常緑性の低木で、日本には室町時代の中期頃に渡ってきているといわれています。
2月~3月頃に花(ピンクや白)を咲かせます。
香りが香木の沈香(じんこう)のような良い香りで、十文字の丁子(ちょうじ)のような花をつけることから、沈丁花という名前が付けられました。
夏:梔子(くちなし)
静岡県及び福井県より西の本州、四国、九州及び沖縄に自生するアカネ科クチナシ属の常緑低木です。
主に照葉樹林内に見られ、日本以外では中国やインドシナに分布しています。
クチナシの花はジャスミンに似た南国風の甘い香りを放ちます。
秋:金木犀(きんもくせい)
金木犀(キンモクセイ)は、秋に甘い香りを漂わせながらオレンジ色の小花が開花するモクセイ科の常緑樹です。
公園や街路樹として、あるいは庭木としても利用されています。秋の訪れを知らせてくれる代表的な存在です。
冬:蝋梅(ろうばい)
蝋梅は、梅の花に似た、まるでロウ細工のような黄色い花を咲かせます。中国原産の落葉低木です。
蝋月(陰暦の12月)に花が咲くことからこの名がついたといわれています。花の香りは、爽やかで清潔感のある清々しく優しい香りがします。蝋梅は根にも良い香りがあります。
これからの時期は、散歩をしているとどこからともなく金木犀の甘い香りに出会います。「どこに樹があるのだろう」と探す楽しみも増え、懐かしい気持ちになるのは何故でしょうか?
人の嗅覚
人間には五感という感覚器官があります。嗅覚はその一つに位置づけられています。
(五感の種類)①視覚 ②聴覚 ③嗅覚 ④味覚 ⑤触覚
この感覚器官で得られた情報は、脳に伝えられ、そこで適切な判断をして行動が指示されます。人間は、脳に障害が生じると身体が動かない、考えがまとまらない等様々な症状が出現します。それは、思考や行動、感覚、意識して調節できない内臓の機能等すべてにおいて脳が情報を処理して各身体機能へ影響しているからです。
嗅覚は、他とは異なる経路で脳へ情報が伝わります。
嗅覚は大脳新皮質を通る前に大脳辺縁系というところに情報が伝わります。
芳香成分は、嗅上皮を覆う粘膜層に溶け込み、嗅細胞から出ている嗅毛で受容された後、嗅細胞を刺激します。その刺激が電気信号となり嗅球と嗅索を経て大脳辺縁系に到達します。その後、大脳新皮質にある嗅覚野に伝わり何の匂いかを判断します。
新生児の脳神経は未熟で、視覚や聴覚などは外界からの刺激により時間と共に発達します。しかし、嗅覚は生後数日で母親の匂いを認識して探し当てることができます。匂いは食事や有毒ガスなどの危険を察知する等、生命の危機を乗り切るために重要な器官であり、生まれながらに備わっているといわれています。嗅覚は生命に欠かせないものではありますが、香りの好みは個人差があり、人それぞれです。
嗅覚は乳幼児期から少しずつ発達し、10代でピークを迎えます。その後、鼻粘膜の感覚細胞が減り、嗅覚に関する神経の機能が低下することで、徐々に嗅覚が衰えていきます。
嗅覚が低下する年齢として、男性60代、女性70代からといわれています。
嗅覚の低下は、喫煙やアレルギー、鼻副鼻腔疾患、動脈硬化、糖尿病等の生活習慣病によっても引き起こされますが、加齢が最も強いリスクファクターです。嗅覚が低下すると、危険を察知することが遅れたり、食欲がなくなったり、気分が落ち込んだりすることもあります。また、嗅覚が平均以下に落ちている高齢者は、軽度認知障害(MCI)の発症率が高くなるという研究結果もあります。
嗅覚の低下を予防するには、禁煙や生活習慣の改善が大切です。
【大脳辺縁系】
情動や本能と密接な関係があり、好き嫌いを決める扁桃体や意欲を感じる帯状回、記憶と関係する海馬が存在します。さらにホルモンや自律神経系、免疫系の調節に関係する視床下部も存在することから種族保存と生命維持に重要な中枢であるといわれています。
植物や自然と触れ合う(五感を刺激して、脳を活性化)
庭に出て植物と触れ合い、花や草木の放つ香りを嗅ぐことで、心身の健康を促進する療法があります。それを、ガーデンセラピーといいます。
庭作業や自然との触れ合いを通じて、ストレス軽減やリラックス効果を得ることができ、精神的な安定や身体機能の回復に寄与するとされています。具体的な活動としては、ガーデニング、野菜や花の栽培、庭の手入れ、自然観察などが挙げられます。
ガーデンセラピーは、高齢者や障害を持つ人々、精神的なストレスを抱える人々等に特に有効とされ、病院や介護施設、リハビリテーション施設などでも取り入れられています。自然との触れ合いが心身に与える影響は前向きな気持ちとなり、五感を刺激しながら、リラックスや満足感、自己効力感に繋がります。
【ガーデンセラピーの主な効果】
1.ストレス軽減・リラクゼーション効果
植物や自然と触れ合うことで、心が落ち着き、リラックス効果が得られます。庭の作業や自然観察を行うことでストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制され、心の安定が促されます。
2.精神的な健康改善
植物と触れ合うことで気持ちが前向きになり、うつや不安の軽減に役立つことがあります。ガーデニングによる達成感や自己効力感が、自己肯定感を高め、気分を向上させるのに役立ちます。
3.身体的な健康促進
ガーデニングは、軽い運動にもなります。体を動かすことで筋力や柔軟性を維持し特に高齢者にとってはバランス感覚や体力の維持に有効です。また、太陽の光を浴びることでビタミンDの生成が促進され、骨の健康にも貢献しています。
4.社会的交流の促進
ガーデンセラピーは、共同で行う活動が多く、他の参加者とのコミュニケーションの機会が生まれます。その為、孤立感が軽減され、社会的なつながりが深まる効果があります。
5.認知機能の向上
植物の世話や観察は、集中力や記憶力を使うため、認知機能の維持や改善に寄与するとされています。認知症予防やリハビリテーションにおいて、特にガーデンセラピーが効果的であるという報告もあります。
6.自然への感謝・感性の向上
季節の移ろいや植物の成長を観察することで、自然の美しさや命の循環に気づき、感謝の気持ちが生まれることがあります。これにより感性が磨かれ心の豊かさが増してきます。
以上、ガーデンセラピーは心身の健康促進に大きくつながるものと思います。
ぜひこれからの季節、五感で感じる四季の移ろい、そのひとときを、自身の日常生活の中に取り入れてみてください。
最後に、無理をせず自身の心身の状態と相談しながら、自身にあった健康寿命の増進に努め自己を整える力を貯えていきましょう。