HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

福祉・介護

喉が渇いてないのに脱水!?熱中症の危険性

目次

  • ①なぜ水を飲まなければいけないのでしょうか
  • ②喉の渇きに気付かず脱水になることも
  • ③かくれ脱水が熱中症の原因に?!
  • ④適切な水分量とはどのくらいか

今回は水分摂取の大切さについて考えてみましょう。

介護老人保健施設 ぼたん園でも水分摂取は脱水や熱中症、更には尿路感染症などの予防にもなるため、とても重要であると考えてケアにあたっております。

 

 

①なぜ水を飲まなければいけないのでしょうか

 

 

人間の身体の大部分は水分で出来ているということをご存知でしょうか。

身体の約60%が水分で出来ている!”、”毎日2リットルは水分が必要!”という情報は、どこかで耳にされたことがあるかと思います。年齢を重ねることで体内に占める水分の割合が変わることも聞いたことがあるでしょう。体内水分量の割合が赤ちゃんでは約70%ですが、高齢者では約50%になります。例えば体重50㎏の方の場合、おおよそ25㎏が体内の水分量になります。

ではこれだけの水分が体内に存在するなかで、なぜ毎日水を飲まなければならないのでしょうか。それは、『水が生命維持に欠かせない物質』であるためです。重要な臓器となる脳や心臓を例にとってみると、脳の約8割、心臓の約7割は水分で構成されています。水は、血液やリンパなどに形を変えて、老廃物を排出することや栄養素を体内の必要な場所へ運搬することなど大きな役割を果たしています。大きな役割を担いながら、全身を駆け巡っているのが水なのです。よって、水分が体内で不足すると大変危険な状態になります。仮に体内から水が1~2%程度が喪失された場合、意識障害を引き起こしてしまいます。パーセントで聞くとわかりにくいですが、先ほど例に挙げた体重50㎏の高齢者の場合だと250ml程度(中コップ1杯)の水分を喪失しただけで上記の症状が現れるということになります。最悪の場合は死に至ることもあり、水分不足は身体にとって危険な状態であると言えるのです。

 

 

②喉の渇きに気付かず脱水になることも

 

 

①で記載したように体内から水分が減ることは危険を伴います。それを起こさないために脳は『喉が渇く』というサインをだします。しかし、高齢者になると感覚機能が低下をすることで『のどの渇き』を感じにくくなると言われています。また、腎機能の低下や、薬の影響により尿量が増えることがあります。それにより気付かぬうちに体内の水分量が減り、”かくれ脱水”を引き起こしてしまうことがあるのです。

 

 

③かくれ脱水が熱中症の原因に?!

 

 

②で述べましたように気付かないうちにかくれ脱水を引き起こしている場合があります。それを防ぐためには、飲むだけでなく食べることも大切になります。水分は飲み水だけではなく、食べ物からも摂取出来ているからです。その為、食べ物をしっかり食べていただいた上で、水などを飲むことが大事になってきます。しかし、高齢期になると食欲減退も同時にみられることがありますので、食べ物からの水分量も減ってしまう場合がみられます。そのことも脱水症の大きな要因となります。

また、高齢者では暑いや寒いという気温の変化による感覚にも気付きにくくなるため、熱中症に注意が必要になります。ニュースでも報道されるとおり熱中症は命の危険を伴いますし、最も多いのが家の中における発症です。猛暑による熱中症での危険を防ぐには、暑いと感じなくても冷房を使用することが大事になります。夏になると汗をかきやすくため、水分が失われることになります。また夜間は日中に比べると気温が下がり涼しく感じますが、暑いことには変わりません。実は夜間の熱中症も非常に増加しているのです。ご自身の感覚ではなく、温度計などで確認をしていただくことも大事になりますので、自分は大丈夫という過信をせず。注意をしていきましょう。

 

 

④適切な水分量とはどのくらいか

 

 

脱水や熱中症の予防には水分摂取は非常に大事になることはわかっていただけたと思います。しかし水などを毎日大量に飲むとなると困難と考えられてしまう方も少なくないです。では適切に水分を摂取するための方法についてもお伝えできたらと思います。

水分を摂取しなければいけないことはわかっていても”たくさん飲めない”または”喉が渇かないから飲まない”などお聞きすることがあります。

ではまずご自身にどのくらいの水分が必要であるかを簡単な計算式で確認してみましょう。

1日の水分必要量は 体重(㎏)×30(ml) で目安量を計算できます。

(例)50㎏の方の場合 50㎏×30ml=1500ml(1.5リットル) となります。

しかし飲み水として1.5リットルを摂取することはとても困難な状況になるため、ここからは水などを飲むタイミングを考えていきたいと思います。

③でもお伝えしたように実は水分は食事からも摂取できています。どの程度摂取出来ているかというと、1400kcalの食事であれば800ml程度となります。そのため体重50㎏の方であれば残り600ml程度を飲料水として摂取してもらうことをまず目指していただければと思います。しかし夏になると食欲減退、多汗が影響し、飲料水として摂取が増えることになりますので、1日1リットルを飲む!ということを目標に、下記のタイミングでコップ1杯の水分を目安に摂っていただくことをおすすめします。

1、起床時

2、朝食時

3、10時頃

4、昼食時

5、おやつ時15時頃

6、夕食時

7、入浴後

8、就寝前

上記を考えるとおおよそ2時間に1回のタイミングで水分を定期的に摂取いただくことが推奨されます。夜間のトイレが気になる方は、就寝直前ではなく就寝1時間前に適度な水分を摂り、起床時の水分をしっかり摂取することで失った水分を補給していきましょう。是非、水分摂取のタイミングを身につけていただき、脱水症や熱中症を予防していきましょう。

*(注意)水分量は基礎疾患によって制限がある場合がございますので、そのような時はかかりつけ医へのご相談が必要となる場合がございます。

入江 ともみ

入江 ともみ(いりえ ともみ)

現職:ぼたん園 栄養管理課
主任代行

ぼたん園で管理栄養士として勤務しております。
病院での経験を15年経て、2023年度よりぼたん園にて介護現場におけるケア支援に携わっています。
ご利用者様の在宅生活への復帰を支援するべく適切な栄養管理に努めつつ、安全に楽しんで食べていただける食事提供を心がけております。

資格

管理栄養士、栄養士