HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

介護の悩み

自宅で介護は難しい?在宅介護が上手くいく3つのコツとは。

目次

  • そもそも在宅介護ってなに?
  • 在宅介護を行う家族のよくある悩み
  • 解決策その1.専門家を頼る
  • 解決策その2.通所型サービスを利用する
  • 解決策その3.捉え方を変える
  • まとめ

 

 

「今後、自宅での介護を検討している」「老人ホームよりも、なるべく住み慣れた我が家で過ごさせてあげたい」「在宅で介護を始めたけど上手くいかなくて困っている」などとお悩みではありませんか。

今回は、介護する家族がストレスを溜めずに在宅での介護を上手く進めていくコツについてお話しします。コツとはずばり『専門家を頼る』『通所型サービスを利用する』『捉え方を変える』の3つです。在宅介護でよくある悩みや問題点に触れながら、これらのコツについて詳しく解説していきます。少しでも介護でストレスや悩みを抱えるみなさんの助けになれれば幸いです。

 

 

そもそも在宅介護ってなに?

 

 

 「在宅介護とは、老人ホームなどの施設介護ではなく、住み慣れた自宅での介護を受けること」です。

厚生労働省が発表した資料「在宅医療・介護の推移について」のアンケートによると約国民の60%以上が自宅での療養・介護を望んでいます。要介護者のうち、実際に68%が自宅で介護を受けています。(令和4年高齢社会白書-2健康・福祉) 介護者の内訳は、同居の配偶者が23.8%、子が20.7%、子の配偶者が7.5%、別居の家族等が13.6%、父母やその他の親戚が2.3%となっているようです。慣れ親しんだ自宅で過ごすことや、信頼できる家族と一緒に居ることが安心感に繋がり、穏やかに日常生活を送られるというのが、在宅介護が選ばれる大きな理由として挙げられます。また親しい友人やご近所の方との交流、行きつけのお店に顔を見せるなどの住み慣れた地域ならではの楽しみや生きがいもあるようです。経済的にも、施設に入所するより費用を大きく抑えられるというメリットがあります。

 

 

 

在宅介護を行う家族のよくある悩み

①介護のスキルや経験がないことに不安を感じる

 排泄、歯磨き、入浴、食事、ベッド・椅子へ乗り移りや移動、認知症への対応など、これらの介護を初めて行う家族は、スキルや経験が無いと言う理由でとても不安に感じるものです。日々の簡単なお世話をすることはできたとしても本格的な介護となれば、専門的な知識が無いと不安や悩みを感じるのは当然と言えるでしょう。

 

②通所型サービスを利用するのを嫌がる

家族を悩ます大きな原因の一つに「家から出たがらない」が挙げられます。すんなりと行ってもらえれば助かりますが、家から出ることを強く拒否し、行くのを嫌がるご利用者も中にはいらっしゃいます。嫌がる理由は様々ですが、外出が億劫で家にいたい、リハビリするのが苦痛、人間関係や慣れない環境への不安などが挙げられます。特に認知症の方であれば、知らない人、知らない場所、環境の変化に対するストレスはより強く感じられ、大きな不安や不穏が生じて利用拒否に繋がることが多くあります。家から出ない時間が増えることで、体力や社交的意欲が低下し、ますます家から出たく無くなるという悪循環に陥ってしまいます。高齢者のひきこもりの増加が深刻な社会問題となっている背景も現状としてあります。

 

③介護する側が介護疲れで心身ともに病んでしまう

介護レベルによって介護の負担は大きく変わってきます。例えば、脳卒中やケガの影響で体が不自由であったり、病気の症状が重かったりした場合は、多くの場面で介助が必要となるため大変です。また、介護をする側が屈強な男性の場合もあれば小柄な女性の場合もあり、そこでも難易度は変わってくるでしょう。さらに“老老介護”という言葉がありますが、介護を受ける側もする側も両方が65歳以上の高齢者というパターンもあります。今の日本は4人に1人が高齢者であり、老老介護が年々増加しているのが現状です。

「身体的・体力的な辛さ」「怒りたくないのについつい言ってしまう」「共倒れするリスク」など、たくさんのストレスを抱え込むことで、心身ともに病んでいってしまいます。中には認知症や病気の家族を周りに知られたくないと1人で介護をしている方もいらっしゃいます。

 

④仕事や育児との両立となるとさらに大変になる

いざ介護に向き合おうという時、仕事や子育ての両立の難しさという問題が立ちはだかります。

これまで続けてきた自身の生活スタイルの中に介護が入ってくるということは、普段働いている家族にとっては突然の“ダブルワーク”を強いられるようなものです。介護と仕事の両立をしながら無理を重ねてしまうといつか限界を迎えてしまいます。

 

 

解決策その1.専門家を頼る

 

 

 

これらの悩みに不安を感じる方もいるでしょうし、すでに問題に直面している方もいらっしゃるかもしれません。そんな方は、まず何よりも先に専門家に相談してください。日本はかなり社会保障制度が整っている国です。介護が必要な方を支援する制度がとても充実しています。家族の介護が必要だと思ったらまずは自治体の窓口地域包括支援センターに相談してみましょう。高齢者や高齢者を支える方が利用できる総合相談窓口が地域包括支援センターです。高齢者の病気、介護、金銭的な問題、虐待など生活全般に関する様々な相談を受け付けています。市町村が設置主体となり、保健師や社会福祉士、主任介護専門員などが配置されています。利用できるサービスや事業所の説明・紹介などを行い、実際に橋渡しをする役割を担っています。特別に相談料などは必要ありません。

 

また、すでに何らかの介護サービスを利用していて新たな問題が生じて悩んでいる方は、介護主任専門員=ケアマネージャーに頼りましょう。介護保険を使っている時点で必ず担当のケアマネージャーが就きます。介護保険制度のことから介護サービスの用途、医療機関の紹介や受診の調整まで、多岐にわたって支援を行う介護に関する相談のスペシャリストです。どんな些細なことでも構いませんので、悩んだときにはケアマネージャーに遠慮なく相談してみてください。

何ごとも一人で抱え込まず、状況が深刻化する前に、ぜひ専門家に頼ってみましょう。

 

 

 

解決策その2.通所型サービスを利用する

 

 

記事の冒頭でも述べましたが、国民の多くは自宅での介護を望んでいます。「できる限り、住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを受けつつ、安心して自分らしい生活を実現できる社会を目指す」と国も在宅介護を強く推進しています。(厚生労働省:在宅医療・介護の推進について) そんな在宅介護を実現させるために、とても頼もしい介護サービスがあることをご存じでしょうか?それが『通所型サービス』です。通所型サービスには、通所リハビリテーション(デイケア)と通所介護(デイサービス)などが存在します。主に送迎、食事、入浴、健康管理、運動、レクリエーションなどのサービを提供します。デイケアはリハビリが主体であり、デイサービスは日常生活の介護サポートが主体となります。各々の事業所で力を入れている分野や特色があり、利用する方の身体・認知機能レベルや希望などによって適切な事業所を選ぶ形となります。利用にあたっては、頻度やサービスの量によって費用負担が変わってきます。利用頻度やサービスを受ける量が多くなれば、その分費用面での負担は大きくなっていきます。

 

しかし、その分の通所型サービスのメリットは非常に大きいものがあります。まず一つ目が『機能の維持・改善』です。上記のよくある悩みで述べましたが、介護を受ける側のレベルによって介護の負担や難易度は変わってきます。もちろん介護を受ける側の、身体的・認知的なレベルが高いことに越したことはありません。“毎日家でベッドやソファの上が中心の生活”と、“週に2~3回は、「適度な運動」「頭を使うレクリエーション」「栄養豊富な食事」「専門家や友人との交流」を行う生活”を比べた結果を想像してみてください。筋肉が減ることで起き上がりや段差の昇り降りなどの生活動作が衰えてしまう、認知症が進行し意思疎通や自立した行動が困難になり目が離せなくなってしまうなど、身体的にも認知的にも機能レベルが落ちると介護者の負担が増えるのは想像に難くないでしょう。

 

二つ目のメリットが『レスパイト』です。レスパイトとは、日本語で“息抜き、一時中断、休息”という意味があります。介護というのは介護を受ける側に焦点が当たりがちですが、そんなことはありません。介護者が健康であることが非常に重要になってきます。介護に追われ頑張り過ぎたあまり体調を崩してしまったり、精神的に病んで仕事や家事に支障が出てしまったりしては、元も子もない状況になってしまうでしょう。精神的にも身体的にもストレスから解放されリフレッシュするためには、一時的にでも介護から離れられる時間を持つことが何より重要となります。

 

改めて、介護を受ける側にとっては機能の維持・改善、介護者にとってはレスパイトという、両者にとって非常に大きなメリットが期待されるのが通所型サービスの大きな特徴と言えるでしょう。

 

 

解決策その3.捉え方を変える

 

 

介護する側が辛くなる原因のひとつにが「すべて自分でやらなくてはいけない」という責任感があります。最初は「やってあげたい」というプラスの意思だったものが心身の疲れとともに「やらなくてはいけないことになり」やがて「本当はやりたくない」というストレスに変わっていきます。この記事で一番伝えたい事になりますが、抱え込む」のでは無く「頼る」という考え方をぜひ持ってみてください。専門家や同じ経験がある友人や親戚といった「」、デイサービスやグループホームなどの「サービス」、身体的な負担を減らしてくれる歩行器や手すりなどの福祉用具である「」、考えれば頼る対象はたくさん存在します。

 

介護はよく「マラソン」に例えられることがあります。マラソンはスタートした直後は「自分はがんばれる」と思っていても、時間が経つにつれて息が苦しくなったり、身体的な苦痛が徐々に高まったりすることで「もう無理だ」と途中で投げ出したくなるものですよね。介護もよく似ています。しかしマラソンと介護の大きな違いは、自分だけの問題ではなく“相手がいるために簡単にやめられない”という点です。

 

だからこそ「がんばりすぎない」ことが大事だと筆者は強く感じています。簡単にはやめられない介護だからこそ、心も体も健康であり続ける必要があるし、常に全力で走り続けていたら最後まで維持させるのは難しいでしょう。まずは自分の生活や自分の気持ちを中心に考え、自分自身の疲れやストレスに気づき、辛さや悩みを「頼る」ことで解消していくことが不可欠です。「がんばれば何とかなる」と思い込まずに、周囲に遠慮なく助けを求めてみてください。

 

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。在宅介護を上手く進めていくためのコツをお伝えさせていただきました。少しでも参考になったり悩みが解消したり、お役に立てたならば幸いです。一生懸命介護について学び、介護する相手としっかり向き合いたいと思っているからこそ、この記事を読んでくださっていると思います。とても素晴らしいことですね。ぜひそんな一生懸命な方こそ、すすんで周りを頼ってみてください。身体的にも精神的にも必ず救われるはずです。頼ることが何よりあなたの健康に繋がり、あなた自身が健康であることが何より相手のためになる。このことを心に留めて置いてもらえると嬉しいです。

 

金子 亮介

金子 亮介(かねこ りょうすけ)

現職:みゆき園デイサービスセンター 機能訓練士

熊本保健科学大学リハビリテーション学科を卒業後、整形外科病院に3年間勤務。外来、一般病棟、急性期を兼務し臨床経験を積む。主に股・膝・肩関節、腰部、頸部等の疼痛や機能障害に対して徒手療法や運動療法を用いた治療、人工関節や半月板損傷の術後ケアに従事。その後、御幸病院に入職。外来・回復期病棟にて2年間実務を重ねた後、現在籍のみゆき園デイサービスセンターに着任。要介護・要支援者に対して個別機能訓練の実施、サービス担当者会議への参加、認知機能に関連する研究への取り組み、自事業所の定期刊行物のコラムの執筆など幅広く活躍中。医療福祉の大部分のフェーズに実際に触れることで身に付けた高い視座を基に、地域の人々のADL・QOL向上を何よりの使命と考え日々研鑽に励む。

資格

理学療法士