HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

ヘルスチェック

あなたの周りは大丈夫? 言語聴覚士が行う飲み込む力を確認する簡単なチェック方法!

目次

  • 私たちが何気なく行っている「飲み込み」とは?
  • 飲み込みが難しくなる「摂食嚥下障害」とは?
  • 摂食嚥下障害の原因や症状
  • 摂食嚥下障害の検査内容
  • 簡単にできる飲み込みの力を確認する方法
  • 最後に、、、

私たちが何気なく行っている「飲み込み」とは?

 

あなたは食べる事は好きですか?「Yes」と答える人は少なくないでしょう。私たちは欲求の中に食欲があり、今までの「美味しい記憶」からこれを食べたいと感じ食事をして、食欲を満たしていきます。また、中には嫌いな食べ物が出てきて「不味い記憶」からすぐに吐き出す、水など一緒に飲み込むなどしているかと思います。(特に薬など)

 

では、食事の時に必要な「飲み込む力」について説明します。

「飲み込み」は一般的に5個のステージから成り立っています。

  • 食べ物を認識する
  • 食べ物を口に入れ、唾液とまぜ飲み込みやすい形態(食塊)にする
  • 食塊をのどに送る
  • 「ゴックン」をして食道に運ぶ
  • 食道から胃に運ぶ

食べる物にもよりますが、私たちは1口ごとにこのステージを経て、食事を行っています。

 

飲み込みが難しくなる「摂食嚥下障害」とは?

 

皆さんもよく「誤嚥性肺炎」と聞きませんか?「嚥下」は「飲み込むこと」の意味で,つまり「誤嚥性肺炎」とは「食べ物などを誤って飲み込むことで起きる肺炎」といった病気です。また、「摂食嚥下障害」とは、「飲み込む力が低下した病態」です。現在、誤嚥性肺炎の死亡率は6位(厚生労働省令和4年人口動態統計月報年計(概数)の概況より)となっており、飲み込みの力を維持することは健康寿命を考える上で重要な要素となっています。

 

摂食嚥下障害の原因や症状

 

原因としては、加齢・脳卒中・外傷・認知症・手術・心因性など様々です。最近では、新型コロナウイルス(COVID-19)の後遺症として嚥下障害をきたす方も少なくありません。

症状では、咳がでる・のどの違和感・口やのどに食べ物がたまっている感じがするなどあげられます。その他では、食事内容や好みが変わった・食事時間や食べ方に変化などもその特徴とされております。

以上のように、摂食嚥下障害は様々なきっかけにより生じますが、一概にこの症状があるからといって摂食嚥下障害をみとめるわけでなく、個人差があります。

 

 

摂食嚥下障害の検査内容

 

言語聴覚士は主治医の指示のもと、問診や簡易的な摂食嚥下スクリーニングを実施し、摂食嚥下障害を抽出します。その後、精査として専門的な摂食嚥下検査を行い、病態評価・分析・安全な姿勢や食事形態の設定・摂食嚥下リハビリテーション(摂食機能療法)など行います。

飲み込む力を確認する方法は医用機器を使用する検査(嚥下造影検査・嚥下内視鏡検査)が有名ですが、専門的な機器を使用せず簡単に飲み込む力をチェックする方法があります。これから紹介する検査はスクリーニングとして多くの臨床現場で使用されます。

 

一度試してみてはどうでしょうか?

 

注意※紹介するチェック方法は簡易テストであるため、すでに日常からムセが多くみとめる、紹介した摂食嚥下障害の症状があるなど「飲み込みが体調に影響している」方は医師の診察をしてください。

 

簡単にできる飲み込みの力を確認する方法

 

1)まずは現在・過去の状況について確認します。

以下の内容は事前の問診として質問されることが多い内容です。質問内容となぜ質問を行うか理由をお伝えします。

・「肺炎と診断されたことはありますか?」

→誤嚥性肺炎は繰り返す性質があります。

・「物が飲み込みにくいと感じることはありますか?」

→口の中やのどに食べ物が残る場合、摂食嚥下障害の可能性があります。

・「食事中にむせることはありますか?」

→むせるということは食べ物が気管に入りかけて防御した状況ですので摂食嚥下障害の可能性があります。

・「お茶を飲み込むときにむせることはありますか?」

→水分は重力に影響されやすく、口の中に入れた後すぐにのどに到達します。特に高齢者は水分でむせやすくなります。

・「食事中・食後、のどがごろごろする(痰がからんだ感じ)ことがありますか?」

→普段の生活では症状がないのに食事前後のみ症状が出る場合、摂食嚥下障害の可能性があります。

・「食べ物や酸っぱい液が胃からのどに戻ってくることがありますか?」

→胃の内容物が戻ってくる方は逆流したものを誤嚥するリスクがあります。

・「胸に食べ物が残ったり、つまった感じがすることはありますか?」

→飲み込んだものが食道などにたまっていないか確認する質問です。

・「夜、咳で眠れなかったり目覚めることがありますか?」

→睡眠中は唾液を誤嚥することで「誤嚥性肺炎」を発症する方も少なくありません。

唾液を誤嚥する場合、食事でも誤嚥する可能性は高くなります。

 

一部の問診内容を提示しました。

上記の問診にて1つでも該当する場合、摂食嚥下能力低下の可能性は高くなります。

そのことを踏まえて、下記のチェック方法を実施してみましょう。

 

2)唾液飲みでのチェック方法

口腔内が乾燥している人はうがいなどを行い口腔を潤わせた状態で30秒間に何回唾液のみが出来るかを計測します。

30秒間で2回以下であれば摂食嚥下能力低下の疑いがあります。

 

3)水を使った飲み込むチェック方法

3mlの冷水を使用します。普段通り水を飲み込んでもらう検査です。

摂取後、ムセがある、呼吸の変化がある、ゴロゴロした声(痰がからんだような)の場合、摂食嚥下能力低下の疑いがあります。

 

4)プリン(ゼリー)を使った飲み込むチェック方法

プリンまたはゼリーを用いて普段通りに飲み込んでもらいますむせや口腔内の残留がないかを評価します。摂取後、ムセがある、呼吸の変化がある、ゴロゴロした声(痰がからんだような)の場合、摂食嚥下能力低下の疑いがあります。

 

5)結果より

唾液のみでのチェック方法では指示理解が難しい方は実施出来ないケースがあります。その為、水飲みのチェック、プリン(ゼリー)を飲みこむチェック方法にてムセ・呼吸変化・声の変化がある場合はかかりつけ医へ相談してください。また、チェック方法は簡易的な方法であり、「ムセのない誤嚥(不顕性誤嚥)」は確認が出来ない為、チェック方法をする前から食事前・後を比較し、声の変化、呼吸の変化、体重減少がありましたら、かかりつけ医へ相談することをお勧めします。

 

最後に、、、

今回、言語聴覚士が行う、簡単に出来る飲みこむ力のチェック方法についてお伝えしました。

問診や簡単に飲みこむ力のチェック方法の結果にて気になることがございましたら、是非かかりつけ医へ相談しましょう。

 

私たちが生きる上でとても重要な「食事」について、この内容が皆様の美味しい安全な食生活の一助になれば幸いです。

 

松下 秀雄

松下 秀雄(まつした ひでお)

現職:御幸病院 リハビリテーション部 言語聴覚科 科長

言語聴覚士での臨床経験は18年。資格取得後、福岡の病院にて回復期リハビリテーションや生活期リハビリテーションを学び、2010年より御幸病院に入職。その後、熊本県言語聴覚士会理事やリハビリテーション専門学校の学校関係者評価委員・教育課程編成委員を経験する。御幸病院リハビリテーション部の理念「患者様とともに~その人らしい豊かな生活の再建を~」を常に考え、患者様へ言語リハビリテーション・摂食嚥下リハビリテーションを実践している。

資格

言語聴覚士、がんリハビリテーション、ボバースSTインフォメーションコース