認知症とは
様々な原因で脳の細胞の働きが悪くなってしまう為に様々な障害が起こり、生活するうえで6ヶ月以上継続して支障が出る状態の事を指します。
認知症を引き起こす病気のうち最も多いのは、脳の細胞がゆっくりと死んでいく変性疾患と呼ばれる病気です。良く聞くアルツハイマー型認知症変性疾患のひとつです。その他に前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などがこれにあたります。
続いて多いのが、脳梗塞や脳出血などが原因で神経の細胞に栄養や酸素が行きわたらなくなることでその部分の神経細胞が働かなくなり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。
認知症の症状
認知症の原因となる病気によって現れる症状に特徴があります。それぞれの認知症ごとに次のような特徴があります。
①アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は進行性の脳の病気で、認知症の方の約半数がアルツハイマー型認知症にあたります。現在根本的な治療方法は見つかっておらず早期に発見する事で進行を緩やかにするなどの治療を選択することが出来ます。
アルツハイマー型認知症の症状
アルツハイマー型認知症の症状は、脳細胞が壊れてしまう事によって中核症状と行動・精神症状とも言われる周辺症状があります。本人は病気であるという認識がないことが多いです。
最も分かりやすく表れるのは、直前の出来事や言動をすぐに忘れてしまうので同じ行動や発言を何度も繰り返し、忘れ物や探し物が多くなります。
その他にも、物の名前が分からなくなり会話の途中で「あの~、あれあれ」など物の名前が思い出せず回りくどい話し方になります。
また、今まで出来ていた料理や複雑な仕事などが出来なくなります。
これらの事を周りに知られたくないという気持ちになり、取り繕いや作り話が多くなることもあります。また不安が募って鬱になり、外出しなくなる場合もあります。
②レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、変性性の認知症の中ではアルツハイマー型認知症についで多い病気です。早い方では40歳ころから発症する方もいます。
記憶障害を中心とした症状と、動作が遅くなって転びやすくなるパーキンソン症状、幻視を繰り返し見る等の症状がありますが、自身では病気であるという認識がないことが多いです。また、男性の方が発症しやすくその数は女性の方の約2倍と言われています。他の認知症と比べて進行が早いのも特徴として挙げられます。
レビー小体型認知症の症状
この認知症の初期症状として現れる認知機能の障害はいつどこでと言った状況を把握する事が困難になったり、会話を理解できなくなったりします。このような症状は良い時と悪い時のムラがみられます。
パーキンソン症状は、パーキンソン病に似た運動障害が現れ、身体が固くなり動きにくくなる、手が震える、急に止まれないなどの症状があり、転倒の危険性が高く寝たきりになりやすいです。
幻視は発症初期から現れ、実際には見えないものが生々しく見える症状があります。これはレビー小体型認知症の特徴と言える症状です。
③前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は神経変性による認知症のひとつで、前頭葉や側頭葉前方の萎縮がみられ、他の認知症ではみられにくい特徴的な症状があります。神経変性による認知症は脳の神経細胞が徐々に減っていくことや、脳の一部に本来見られない細胞ができ脳が委縮することで発症する事が分かっています。
前頭側頭型認知症の症状
前頭葉は人格・社会性・言語を、側頭葉は記憶・聴覚・言語をつかさどっている為発症するとこれらが正常に機能しなくなることにより、多様な症状が現れてきます。
自分本位な行動や万引きなどの反社会的な行動をとるようになります。また同じような行動や発言を繰り返す、食事などの好みの変化、会話の中で言葉が出て来ないなどがみられるようになります。
④脳血管性認知症
脳血管性認知症は、血管障害によって脳に酸素や栄養が行きわたらず、脳細胞が死滅することで発症する認知症です。
脳血管性認知症の症状
脳血管性認知症の初期症状としては、失行、失認、失語の症状がみられます。
失行(しっこう)とは、ズボンを下ろせなくなる、ボタンを掛けることが出来なくなる、といった運動機能に異常はないが簡単な日常生活の動作が出来なくなります。
失認(しつにん)とは、半側空間無視があり皿に食事が残っているのに食事を終えてしまう、お茶の入ったコップを飲まずにひっくり返してしまう、といった目や耳には異常はないがそれを意味のある対象と認識できなくなります。
失語(しつご)とは、話をしていても内容を理解できない、話の内容は理解できるが自分が話そうとすると話せない、といった聴覚や発声に異常はないが話す・聞く・読む・書くことが出来なくなります。
その他にも、脳血管性認知症特有の症状として、調子の波が激しい、鬱、感情失禁、夜間のせん妄、まだら認知症などがあります。
認知症ケアのポイント
①患者さんの尊厳を尊重する
個性を尊重する: 患者さん一人ひとりの個性や習慣を尊重し、その人に合ったケアを行うことが大切です。
声かけ: 患者さんの名前で呼びかけ、優しく笑顔で語りかけることで、安心感を与えることができます。
プライバシーを守る: 着替えや排泄の際にプライバシーに配慮し、尊厳を守ることが重要です。
②安全な環境を作る
転倒防止: 床に滑り止めマットを敷いたり、壁やベッドに手すりを設置したりするなど、転倒防止に努めることが大切です。
迷子防止: 外出の際は、見守りが必要な場合は必ず同伴者をつけるなど、迷子にならないように注意しましょう。また地域の方にもご理解・ご協力を求めていることも大事です。
火事の予防: コンロのそばを離れないようにしたり、たばこの火の始末をきちんと行うなど、火事の予防にも気を配りましょう。
③コミュニケーション
簡単な言葉で話す: 専門用語を使わず、ゆっくりと、簡単な言葉(簡潔明瞭)で話しかけることが大切です。
視覚的な情報: 写真や絵、ジェスチャーなどを使い、視覚的に情報を伝えることも有効です。
共感する: 患者さんの気持ちに共感し、話をゆっくりと聞いてあげることが大切です。
④生活リズムを整える
規則正しい生活: 睡眠時間を確保し、食事を規則正しく摂るなど、生活リズムを整えることが大切です。
軽い運動: 朝からの散歩や体操など、軽い運動を取り入れることで、身体機能の低下を防ぐことができます。
趣味の活動: 患者さんの好きなこと、得意なことを一緒に楽しんだり、新しい趣味を見つけることも良い刺激になります。
⑤家族や周囲の支援
情報共有: 医師や看護師、ケアマネジャーなど、関係者と情報を共有し、連携することが大切です。
** respite care (休息ケア):** 家族が一時的に介護から離れることができるように、 respite care を利用することも検討しましょう。
介護者支援: 介護者向けの相談窓口やサポートグループなどを利用し、介護のストレスを軽減することも大切です。
⑥専門家への相談
医師: 定期的に医師の診察を受けることが大切です。
看護師: 日常生活のケアについて、看護師に相談することも可能です。
ケアマネジャー: 介護サービスの利用について、ケアマネジャーに相談しましょう。
認知症専門医: 認知症の専門医に相談することで、より適切なケアを受けることができます。
⑦早期発見・早期治療
定期的な健康診断: 定期的に健康診断を受けることで、早期発見につながります。
物忘れのサイン: 物忘れや判断力の低下などのサインに気づいたら、早めに医療機関を受診しましょう。
認知症ケアは、患者さんや家族の負担が大きいものです。一人で抱え込まず、周囲の支援を積極的に活用することが大切です。
まとめ
認知症を患う方をサポートするにあたり、最も大切な事は一人で家族で抱え込まない事です。認知症は症状が人により様々で対応が難しい場合が多くあり、主な介助者の負担はとても大きなものになります。その為家族だけで抱え込むのではなく専門医や福祉サービスなどに相談する等、社会資源を上手く活用する事で負担を軽減しながら在宅生活を続けられることが望ましいです。