目次
- 見直され始めたお灸
- お灸と艾(もぐさ)
- 台座灸のしかた
- まずはこのツボから!
見直され始めたお灸
今みたいに、診断や医療の技術が発展していなかった遥か昔、人々は一体どのようにして心身を癒してきたのでしょうか?
鍼や灸という治療技術は、2000年以上も前に古代中国で生まれました。日本には5世紀半ば頃に伝えられ、独自に発展していったと考えられています。
鍼は特別な技術を必要としますが、家庭でできる治療に「お灸」がありました。お灸が庶民の間に広まったのは江戸時代。明治期になり近代西洋医学が導入されると衰退の一途をたどりますが、今またセルフケアとしての「お灸」が見直されています。
お灸と艾(もぐさ)
お灸は、簡単にいうとツボに温熱刺激を与える治療法のことです。お灸には艾(もぐさ)を使用します。
艾はヨモギの葉っぱの裏の白い毛を集めたもの。その精製度によって温熱レベルの違いが生じます。
お灸にはさまざまな種類があり、艾を直接皮膚に置いて燃やす直接灸、皮膚から離した状態で間接的に燃やす間接灸(棒灸、台座灸、隔物灸など)に大別されます。
この中で、どなたでも簡単にできるセルフケアとして、まずおすすめしたいのが「台座灸」です。
皮膚と艾の間に紙パルプの台座があるため、皮膚に火がふれることなく安心してお使いいただけます。
“お灸は熱い!こわい!”というイメージをお持ちだった方は、この程よく心地よい温かさをぜひ体感してみて下さい。
台座灸のしかた
まず、台座灸・ライター・ペン・火消し用の水を入れた容器を準備しておきます。
初めての方は温熱レベルの弱い台座灸から試してみましょう。
ライターは仏壇用のものが扱いやすく、おすすめです。
① お灸をするツボに、ペンで印をつけておく(火をつけた後に慌ててツボを探すことがないように)
② 台座灸の裏のシールをはがす
③ 指先にのせて、先端に火をつける(煙がスーッと立ったらOK)
④ 台座部分を持って、ツボに置く
煙が出なくなった頃から、台座を通じてツボが徐々に温かくなってきます。
火をつけてから終わるまで約5分。わからない時は台座を触って熱が冷めていたら、終了のサインです。
もし途中でピリピリ!アチチッ!といった鋭い熱さを感じたら、我慢せずすぐに外してください。
台座を親指と人さし指とではさんで、少し回すようにすると簡単に外せます。
最後に、火消し用の水で火がしっかり消えたことを確認しておきましょう。
台座灸を1つしても温かさを全く感じなかった場合は、同じツボに2つ目を施してみて下さい。
(他にもいくつか注意点がありますので、添付の説明書を読んでから始めて下さい)
まずはこのツボから!
合谷(ごうこく)
手の甲で、親指と人さし指の間のくぼみにあります。少し人さし指寄りで探してみましょう。
「面目合谷に収む」という言葉があり、顔面部や頭部の症状には合谷が広く用いられてきました。
頭痛や眼精疲労、鼻水・鼻づまり、歯の痛み、風邪の諸症状に。
また、合谷が属する経絡(けいらく)は腕や肩を通っていることから、手や肘の痛み、肩こりなどにもおすすめです。
足三里(あしさんり)
すねの前で、膝のお皿に手をあてて中指の指先が位置するところです。
(足三里はさまざまな取り方がありますが、ここでは簡便な取り方をご紹介します)
胃の経絡上のツボで、胃腸を元気にしてくれます。食欲がない時にもおすすめです。
足三里にお灸をしている最中から、お腹がグルグルと活発に動き出すこともあります。
他には膝の痛みや足の疲労、健康増進のための養生のツボとしてもよく知られています。
松尾芭蕉が足三里にお灸をしながら旅を続けた話、お灸博士といわれた原志免太郎医師が足三里に毎日お灸をして108歳まで長生きされた話は有名ですね。
いかがでしたでしょうか?
当院では治療を受けにこられた患者様にも、セルフケアとしてお灸をおすすめすることがあります。
少しずつでもコツコツ継続することが大切です。
お灸は穏やかに自分自身の心と身体に向き合う時間も作ってくれます。
院外では定期的にお灸教室も開催しています。興味を持たれた方はぜひご参加下さい。