HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

超高齢時代をどう生きるか~あなたに届けるキーワード~

第1回 年金~社会保険その1~

目次

  • 高齢社会を支える年金・医療・介護の制度について
  • 厚生年金の保険料率の引き上げ
  • まとめ

 

高齢社会を支える年金・医療・介護の制度について

 

高齢社会を支える年金・医療・介護の制度は、保険料を主な財源とする社会保険制度として構築されています。給付費でみると、年金が60.1兆円、医療が41.6兆円、介護が13.5兆円です(2023年度予算ベース)。

このうち、長生きすることにより老後の資金確保が困難になるリスクに対応するのが年金制度です。

基礎年金(国民年金)は半分が国負担で、厚生年金(共済年金を含む)は全額保険料ですが、労使折半となっています。

日本の年金制度は働いている加入者が支払う保険料を同時代の高齢者への給付に充てる賦課方式が採用されています。年金額は、毎年、賃金や物価の伸びなどに応じて改定されるので、インフレの保険としての機能も有しています。

 

 

 

なお、年金財政の安定化のため、あらかじめ保険料の一部が年金積立金とされ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって運用されています。

一方、少子高齢化と平均余命の伸びにより、年金受給者の増加と現役世代の減少が見込まれる中で将来の負担が重くなりすぎないような工夫が必要です。

 

 

 

厚生年金の保険料率の引き上げ

 

 

厚生年金の保険料率は2004年から段階的に引き上げられ、その上限を収入の18.3%に固定されました(2017年9月)。また、社会保険の加入者をパートやアルバイトに広げたことや、長く働き続ける女性や60歳過ぎても働いて保険料を払い続ける人も増えており、このような制度の幅の広がりが安定した受給額の確保に貢献すると期待されます。

 

さらに、賃金変動率や物価変動率を基に年金額の改定を行う際、改定率がプラスになった年に限り、年金額の上昇幅を本来の改定率より緩やかにするマクロ経済スライドという仕組みもあります。ただ、物価や賃金の伸びがマイナスの場合はマクロ経済スライドも発動できず、これまでのデフレ経済下では調整が進まなかったという側面もあります。

 

 

 

まとめ

 

いずれにせよ社会保険制度としての年金が効果的に機能するには、やはり経済成長が重要ですが、高齢者人口がピークを迎える2040年ごろに向けて、医療や介護のあり方とともに更なる工夫が求められるものと思われます。

 

(初出:ぎょうせい・月刊「税」・2024年4月号)

猿渡 知之

猿渡 知之(さるわたり ともゆき)

大正大学地域構想研究所 客員教授

経歴

1961年 熊本県出身
1985年 東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省
2020年 総務省退職後、株式会社日本経済研究所理事を経て、東日本電信電話株式会社特別参与(現在)

総務省での主な地域政策業務歴

自治政策課理事官・企画官(2001年4月~2003年8月)
高度通信網振興課長(2009年4月~2011年3月)
地域政策課長(2012年4月~2015年7月)
地方創生・地域情報化等の担当審議官(2015年7月~2018年7月)

自治体での勤務歴

京都府総務部長・副知事(2003年8月~2009年3月)をはじめ、青森県庁、栃木県庁、千葉県庁、大阪府庁において勤務

主な著書

「超高齢時代を乗り切る地域政策~地域政策構想技術リスキリングノート~」(大正大学出版会2023年)
「超高齢時代を乗り切る地域再生の処方箋」(ぎょうせい2022年)
「自治体の情報システムとセキュリティ」(学陽書房2019年)
「公的個人認証のすべて(共著)」(ぎょうせい2003年)