みゆきの里では、2008年10月より料理研究家 辰巳芳子先生のレシピをもとに、年間30数種の「いのちを支えるスープ」を毎週献立に組み込み、季節の素材を使ったスープを患者様やご利用者様に提供しています。
そして、「いのちを支えるスープの勉強会」は、山本総料理長、管理栄養士や調理師が、鎌倉の辰巳先生の自宅教室で直伝されたレシピを体験できる催しです。勉強会は、初回まで半年の準備期間を経て、すでに1年間余り継続しています。今回は管理栄養士さん達を中心に15名が参加しました。このスープを学ぶ意味を、みゆきの里HPに掲載された山本総料理長の記事を引用しつつ、あらためて振り返ってみたいと思います。
辰巳芳子と「いのちのスープ」
著名な料理家 辰巳芳子(1923年生まれ)は、嚥下困難となった父親の8年におよぶ介護経験から、スープに着目し「スープの会」を主宰しました。そのスープは「いのちのスープ」として世に広く知られています。山本総料理長によれば、「生を受けてから、いのちを全うする瞬間まで口にでき、その人を支えることができる…こうした考えから名づけられた」のが、「いのちのスープ」なのだそうです。
そのスープは、「季節に応じた食材を選び、素材を5mmや1cmに揃えて切り、蒸らし炒めという手法を使って栄養素が残りやすいというのが特徴…スープの種類は40~50種類あります。」「薬食同源(食事はおくすり)といわれるように、旬の食材を使用し、各素材が持つ栄養の効能を最大限に引き出し、自然治癒力を高めます。」(みゆきの里HPより)
「いのちのスープ」にこめられたメッセージ
内弟子だった対馬千賀子さんによれば(クロワッサンonline2023.05.20記事より)、ある朝、朝食を用意した際、「何を食べるか私に聞かないのね」と問われたそうです。「食事を整えるとき、食べる人のことを考えずに作れるのか」「胃腸は疲れていないか。睡眠は足りているか。体調だけでなく、季節や湿度にも思いを巡らせることが家庭料理のベース。自分一人の食卓を仕立てるときも同じです。何を食べたいのか。なぜ食べたいのかを考えよ」と。「食を整えるのは、単に栄養補充ではなく、自己実現が目的。
したいことをするために、なりたい自分になるために、心身を食で支えなさい」という辰巳イズムです。山本総料理長も「主体はいのち。いのちを守るため、いのちを丁寧にいきるため、人間の限界を知り、自然の法則を知り、風土とともに生きてほしい」と、命のスープに込められた辰巳先生のメッセージを伝えておられます。 山本総料理長▶ |
みゆきの里における「いのちを支えるスープの勉強会」の意義
みゆきの里では、「何よりも予防が大事」という創業の理念に基づき、“健やかな心と身体を育むための全人的健康づくり”をめざして、セルフケア・セルフメディケーションの普及に取り組んでまいりました。2022年に、そのセルフケアの方法(東洋医学、アロマテラピー、マインドフルネス、食養生、ボディケア)に係る情報を提供するサイト『Holistic Health Lab(ホリスティックヘルスラボ)』を、HP内に開設しております。「いのちを支えるスープの勉強会」も、その実践的活動の一つです。
食べる人の心に届け!小カブのポタージュ
「小かぶという、あのやさしい野菜の本性を愛らしいと感じた辰巳先生の想いから生まれたスープ。
小かぶというものは、あのぴちぴちした真っ白の外皮をむくと、ネット状の繊維がおいしい実を守っている。 この繊維は、小かぶのすっぺりした”口ざわりとうまみを損なうので、むき去らねばならない。 しかし、この外皮とネットをむいた物の量を常々目の当たりにして、『もったいない、これもスープに取り込んでしまおう』と(先生は)考えられた。 さらにかぶの葉は余されものになりやすいが、かぶの葉も葉先・茎もミキサーにかけスープに取り込んで余すところなく用いている。」
「野菜の旨味を充分に引き出すためには、一品ずつ、切り方・大きさ・厚み・形それぞれ均一に切り揃える。火力も中火以下で、鍋ふたをしながらじっくりと蒸らし炒めの手法で作る。鍋ふたについた水滴を旨味が詰まっているので鍋の中にと、愛情と心を込め丁寧に作り上げていく…心と愛情のこもった料理には目には見えないが、伝わるものがある…機能的栄養だけではなく、食べる人の心の栄養につながることを目的として『いのちを支えるスープ』を(みゆきの里は)提供しています。」(みゆきの里HPより)
スープをいただいて
手際の良さに目を奪われつつ、素材に対する愛情、食べる人への思いが伝わり、出来上がったスープは、グリーンが鮮やか!まろやかで本当においしくて、ホッと癒されました。