HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

超高齢時代をどう生きるか~あなたに届けるキーワード~

第4回 長寿遺伝子

目次

  • 医療の進歩
  • サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の存在

 

平均寿命が延びても、天寿を全うした場合の最大寿命は延びていません。

老化そのものが死の要因です。

がん、心臓病、アルツハイマー病など、一般に加齢と関連付けられる様々な状態すべてに共通するリスク因子も老化と考えられています。

死の恐怖とともに、健康が失われ大変に厳しい老後になるのでは、という不安の原因でもあります。

 

 

医療の進歩

 

これに対し医療も進歩しています。

健康な状態では、免疫細胞の一種T細胞が常に体内を巡回し不良がん細胞を見つけて死滅させています。

ところが、不良がん細胞はT細胞の目を欺き「異物を攻撃するな」という命令を送る免疫チェックポイントという仕組みを作り出します。

そこで、この仕組みを作動させないようにする「免疫チェックポイント阻害療法」が生み出されました。

今のところ効果を発揮するがん患者は限られるようですが、日本人の死因のトップである「悪性新生物(がん)」の治療に向けても大きな方向性が示されたと言えるでしょう。

抗がん剤によりがんの増殖を抑え、がんと共存して生きていくという方法も進んできています。

 

 

 

老化そのものを疾患と捉え、その対策の研究も進められています。

高齢の動物の遺伝情報からも正常なクローンが生まれてくることがわかりました。

DNAはデジタル方式なので情報の保存やコピーを確実に行うことができるようです。ところが、どの遺伝子を使い、どの遺伝子を使わないかを決めるエピゲノムの情報はアナログ情報ですので、時間とともに化学物質や様々な要因で劣化するようです。

 

 

サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の存在

 

 

エピゲノムの劣化が老化の原因だと考えられると、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の存在がクローズアップされてきました。

この遺伝子からできる酵素(タンパク質)は、障害を受けた遺伝子を修復したり、慢性炎症を抑えたりするとともに、エピゲノムの劣化を防ぐ働きがあるようなのです。

厳しい環境下で遺伝物質を守る役割を果たしてきた長寿遺伝子にとって、適度なストレスがその活性化に必要だと考えられています。では、適度なストレスとはどのようなものでしょうか?

 

(初出:ぎょうせい・月刊「税」・2024年7月号)

猿渡 知之

猿渡 知之(さるわたり ともゆき)

大正大学地域構想研究所 客員教授

経歴

1961年 熊本県出身
1985年 東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省
2020年 総務省退職後、株式会社日本経済研究所理事を経て、東日本電信電話株式会社特別参与(現在)

総務省での主な地域政策業務歴

自治政策課理事官・企画官(2001年4月~2003年8月)
高度通信網振興課長(2009年4月~2011年3月)
地域政策課長(2012年4月~2015年7月)
地方創生・地域情報化等の担当審議官(2015年7月~2018年7月)

自治体での勤務歴

京都府総務部長・副知事(2003年8月~2009年3月)をはじめ、青森県庁、栃木県庁、千葉県庁、大阪府庁において勤務

主な著書

「超高齢時代を乗り切る地域政策~地域政策構想技術リスキリングノート~」(大正大学出版会2023年)
「超高齢時代を乗り切る地域再生の処方箋」(ぎょうせい2022年)
「自治体の情報システムとセキュリティ」(学陽書房2019年)
「公的個人認証のすべて(共著)」(ぎょうせい2003年)