HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

超高齢時代をどう生きるか~あなたに届けるキーワード~

第5回 エピゲノム

 

自分自身を形作るのに必要な最小限の遺伝情報1セット分のことをゲノム(DNAの塩基配列情報)と言います。

私達の細胞1個1個にはすべて同じ遺伝情報が格納されているのに、それぞれの細胞は何百種類もの異なる役割へと分化します。

そのプロセス全体を調整しているのがエピゲノムと呼ばれる情報です。

 

 

エピゲノム異常

 

 

例えば、双子は基本的に同じゲノムをもちますが、外見や病気のなりやすさなどが全く同じわけではありません。

大人になるにつれて、化学物質・ストレス・外部からの刺激などの要因によって、人のエピゲノムの状態が少しずつ変化していくからだと言われています。

どの遺伝子を適切に使用するかというエピゲノムを介した遺伝子の使い方に異常が生じて、個々の臓器の機能が低下することが老化の原因だとも指摘されています。

エピゲノム異常を元に戻すことで老化を防ぐ薬の登場も夢ではないでしょう。

ただ、現在の段階でも、一定のストレスによってエピゲノムの変動を誘導し、老化を制御することは可能だと言われています。環境が厳しいときにも自らの遺伝物質を修復してきたサーチュインなどの長寿遺伝子について、細胞を損傷させることなく活性化させる適度なストレスに着目するのです。

 

 

代表的なものは「断食と運動の組み合わせ」

 

 

代表的なものは「断食と運動の組み合わせ」です。

食事の量は普段と変えないものの、食事を抜く期間を周期的に差し挟む間欠的断食によって、カロリーをときおり制限し空腹にすると多大な健康効果が得られるようです。身体を飢えさせるとサバイバル回路が始動するのでしょうか。さらに年齢を重ねるにつれて努めて身体を動かすことが大切となります。心拍数や呼吸数を上昇させる高強度インターバルトレーニング(適度な無酸素運動)が特に有効なようです。赤血球の増加・血管新生の促進・解糖系の活性化など低酸素応答と呼ばれる状態に調節されるのです。

また、低い気温に身をさらすのもサバイバル回路を導く効果があるようです。

いずれにせよ長寿遺伝子を活性化させながら充実した日々を送るということが超高齢時代の最重要テーマと言えそうですね。

 

(初出:ぎょうせい・月刊「税」・2024年8月号)

猿渡 知之

猿渡 知之(さるわたり ともゆき)

大正大学地域構想研究所 客員教授

経歴

1961年 熊本県出身
1985年 東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省
2020年 総務省退職後、株式会社日本経済研究所理事を経て、東日本電信電話株式会社特別参与(現在)

総務省での主な地域政策業務歴

自治政策課理事官・企画官(2001年4月~2003年8月)
高度通信網振興課長(2009年4月~2011年3月)
地域政策課長(2012年4月~2015年7月)
地方創生・地域情報化等の担当審議官(2015年7月~2018年7月)

自治体での勤務歴

京都府総務部長・副知事(2003年8月~2009年3月)をはじめ、青森県庁、栃木県庁、千葉県庁、大阪府庁において勤務

主な著書

「超高齢時代を乗り切る地域政策~地域政策構想技術リスキリングノート~」(大正大学出版会2023年)
「超高齢時代を乗り切る地域再生の処方箋」(ぎょうせい2022年)
「自治体の情報システムとセキュリティ」(学陽書房2019年)
「公的個人認証のすべて(共著)」(ぎょうせい2003年)