かつて人間は血管とともに老いるといわれていたが、今では、人間は内皮細胞とともに老いると言い換えられるようになった。加齢による老化ばかりでなく、食生活の欧米化(動物性脂肪摂取量増加等)によって、日本人においては、内皮細胞・血管の衰えが若年齢化している。これが、いわゆる生活習慣病の急増につながっており、血管を健やかにすることが、健康寿命の延伸につながる。
私たちの熊本県の状況はどうだろうか。
外食:ハンバーガー 1位 焼肉:8位 即席めん:3位
結果をみてわかるように、血管を強くする野菜が少なく、動物性脂肪摂取量が多く、下記健診データにも表れている。今までは、ドロドロやサラサラなど血液だけに注目されていたが、血管壁そのものが注目されてきた。時に血管病そのものをターゲットし、予防する。内側に注目することが重要である。
【熊本県の健診データ実態 2020年度】
内皮細胞ケアが重要
内皮細胞の主な働き
・血管壁を守る「バリア機能」血液中の悪い成分が血管壁内に侵入するのを防ぐ堤防のような役割を果たす。
・血管の健康を促進する「活性化機能」一酸化炭素(NO)を生み出し、このNOが血管壁を広げたり、血液中に放出されることで血液をかたまりにくくさせる。 |
内皮細胞は、皮膚と同じようにターンオーバー(新陳代謝)によって新しく生まれ変わっているため、すでに動脈硬化が始まっている段階でも、生活習慣を見直し、継続的に血管をケアすることによって、内皮細胞の機能を回復させることができ、血管自体の若さを取り戻しましょう。
「内皮細胞」を元気にして“強い”血管をめざそう
血管を強くしなやかによみがえらせる秘訣は、内皮細胞にかかる負担を減らし、かつ適度な刺激を与えることです。具体的には次の3つのポイントがあげられます。
「内皮細胞」を活性化する3つのポイント
(1)内皮細胞を傷める要因を減らす不健康な生活習慣を続けていると、内皮細胞を傷める要因となる“活性酸素”と呼ばれる物質が大量に発生します。活性酸素を減らしたり無害化するため、抗酸化成分を豊富に含んだ緑黄色野菜を積極的に摂取するとともに、禁煙、ストレスの軽減を心がけましょう。
(2)血圧を上げる要因を減らす血圧が高い状態になると、内皮細胞が傷つき、その機能が低下していきます。血圧を上げる主な要因は塩分の摂りすぎと肥満です。減塩を中心とした食生活の改善で、血圧を安定化させ、血管にかかる負担を減らしましょう。
(3)血管内を血液がスムーズに流れる環境をつくる血液が血管内をスムーズに流れるようになると、内皮細胞に適度な刺激がかかります。血液ドロドロの原因となる過食や栄養バランスの偏りを改善し、適度な運動を行いましょう。 |
内皮細胞を活性化することで、血管が強くなり、ひいては血管病の予防や健康長寿につながっていくのです。
食で内皮細胞を強くする、すこやかにするためには、酸化ストレスを減少させる抗炎症食、デトックス食を積極的に取りましょう。
抗炎症食を選んで摂る、避ける食品
◎新鮮で色の濃い野菜や果物を多く摂る
(トマト・ほうれん草・小松菜・ブロッコリー・りんごなど)
◎加工食品やジャンクフード、マーガリンは避ける
◎ω3脂肪酸の青魚、サバ、鮭を多く摂る
◎食物繊維の多い大豆や豆、南瓜などを摂る
◎ブロッコリーやキャベツ、カリフラワーなどアブラナ科の野菜を食べる
◎油はオリーブ油エクストラバージンオイルを摂る
抗酸化力の高い食品を摂る
抗酸化力のエース「ビタミン A・C・E」
ビタミンA =β‐カロテン:人参・南瓜・小松菜・ほうれん草
β‐クリプトキサンチン:みかんなどのかんきつ類、とうもろこしなど
リコピン:完熟トマトに大量に含まれ、すいか、柿などにも含まれている。
アスタキサンチン:鮭、海老、カニなど魚介類や海藻類に含まれる赤色の天然色素。強力な抗酸化成分を持つ。
ビタミンC:緑黄色野菜 柑橘類(みかん、レモン、オレンジ、かぼす等)
ビタミンE・アリシン:青魚、レバー、大豆、ナッツなどの種実類、オリーブ油、えごま油、にんにくなど
食物繊維:きのこ類、玄米、全粒粉パン
デトックス効果の高い食品を摂る
キレート効果の高い食材を多く使う
玄米、ねぎ、りんご、キャベツ、にんにく、海藻類、牡蠣、こんにゃく、レバーなど
※キレートとは:活性酸素予防のこと