リハビリテーションという言葉を間違って使用されていませんか?
リハビリテーションを略して、
「リハビリ」「リハ」と言うと理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が病気の治療や機能回復訓練などを行うという限定したイメージを持たれている方が大半ではないでしょうか。
また、「リハビリの人を呼んで」 「リハビリ○時からです」 「リハビリはいつあるの?」「リハビリカンファの調整して」などという光景を目の当たりにします。 日本ではリハビリ=療法士=機能訓練のようにとらえられる場合が多いですが、これは実は間違っている表現になります。
リハビリテーションの目的は全人間的復権です
世界と日本ではこのようにリハビリテーションは定義づけられています。
世界では(1部抜粋)
≪世界保健機関:WHO≫(1968年)
リハビリテーションとは「医学的、社会的、教育的、職業的手段」を併用調整し訓練あるいは再訓練することによって、機能的能力が最高の可能性に達成することを目指している。
日本では(1部抜粋)
≪厚生省・厚生白書≫(1965年)
リハビリテーションとは、心身に障害がある者が社会人としての生活ができるようにすることである。実際には、心身に障害のある人が社会復帰、職場への復帰、家庭への復帰あるいは学校への復帰を促進することにより、身体的、精神的、社会的、職業的にその機能を最大限に発揮させ、最も充実して生活できるようにすることを目的としている。
≪厚生省・厚生白書≫(1981年)
リハビリテーションとは、障害者が一人の人間として、その障害にもかかわらず、人間らしく生きることができるようにするための技術及び社会的、政策的対応に統合的体系であり、単に運動障害の機能回復の部分だけをいうのではない。
ですので、「リハビリテーション」は単に復帰の為の訓練を指す用語ではなく、再び適した状態に回復すること、そこには名誉の回復という意味も含まれます。
リハビリテーションには大きく次の4つの分野があります
- 医学的リハビリテーション
- 職業的リハビリテーション
- 教育的リハビリテーション
- 社会的リハビリテーション
4つの側面に色々な目的、色々な職種が関わっていることがわかります。
医学的リハビリテーション
【リハビリテーションを行う職種】
医師、看護師、薬剤師、栄養士、社会福祉士、介護福祉士、義肢装具士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など
医師は病気からの障害を医学的に診断治療し、機能回復と社会復帰を総合的に行います 。 理学療法士は運動機能を中心に立つ・歩くなどといった基本的動作能力の回復を目的とし、作業療法士は食事・トイレ・移動など応用的動作能力を日常生活の活動を通じて生活の質を向上させ、言語聴覚士はコミュニケーションや嚥下機能の改善を図ります。 看護師は理学療法・作業療法・言語聴覚療法で獲得した能力を日常生活で使えるようにするため、病棟生活自体がリハビリになります。また、常に在宅復帰を見据えたケアを行われます。 社会福祉士は患者・家族、多岐に渡る職種や関係機関の橋渡しとなって、社会福祉制度や各種サービスなど在宅や社会復帰に向けたサポートをしていきます。 このように疾病に対する内科と外科的治療、心身の障害に対する治療、指導、援助をしているので、多職種によりリハビリテーションを行っていることとなります。 ですので、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は医学的リハビリテーションの一翼を担っていることになります。
社会的リハビリテーション
【リハビリテーションを行う職種】
社会福祉士、介護支援専門員、精神保健福祉士、生活指導員、職業指導員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など
障害を持つ人々や社会的不利を抱える人々が、家庭(住まい)・地域社会・職業上の要求に適応できるように援助したり、全体的リハビリテーションを妨げる経済的社会的な負担を軽減し、社会に統合または再統合を行います。さらに社会的活力を身につけることを目的としています。
職業的リハビリテーション
【リハビリテーションを行う職種】
職業指導員、就労支援員、職業カウンセラーなど
障害のある人が働きがいのある人間らしい仕事に就きそれを維持することができるようにする、職業指導、職業訓練、職業紹介などの社会で再統合を促進することをいいます。
教育的リハビリテーション
【リハビリテーションを行う職種】
特別支援教育教師や学校カウンセラー、学習支援員、心理士、職業指導員、療育士、言語聴覚士など
心身の障害のある児童や人に対して盲、聾、特別支援学校などでの教育を行い、能力向上や潜在能力を開発し、自己実現を図れるように支援することを目的に行います。
まとめ
リハビリテーションとは、患者・ご利用者さんに関わる職種になります。もちろん、ご家族(介護者)も含みます。 病院では多職種で医学的リハビリテーションを行い、専門的な評価と治療ケア、退院支援なります。 在宅や各施設では生活支援や環境調整(介護サービスも含む)、コミュニティ活動参加など社会的リハビリテーションを多職種で行っていることになります。ですので、決して理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)のみが行うのがリハビリテーション(リハビリ)ではありません。 患者・ご利用者さんへ関わるみなさんが治療・支援・援助を行い、再び適した状態に回復を図ることがリハビリテーションになります。