骨盤が後傾して猫背になり、首(うなじ)が前に出て頭が下がり、歩幅が狭くなって歩くのが遅くなる、というのが典型的な老化の姿勢でしょう。
望ましい姿勢について
望ましい姿勢については、宮本武蔵が「五輪書」に説いている内容が大変参考になりました。
「首はうしろの筋をまっすぐにし(うなじに力を入れる)、両肩を下げ、背筋をまっすぐに、尻を出ださず、腰がかがまないように腹を張る。
動くときは、まず身体から寄せていく。」というような指摘をし、このような「兵法の身」を「平常の身」とすべしと説いています。
股関節を外旋させて(太腿の骨を外側に回し)、骨盤にしっかり嵌めて前に押すと肛門が締まって骨盤が立ってきます(尻を出ださず)。
すると、背骨の下の仙骨と左右の腸骨(骨盤)の接点である仙腸関節が締まり、上半身と下半身がしっかりと繋がります。
併せて、背骨を前に出すような感じで胸を開けていくと肩甲骨も外旋して両肩が下がります。
そして、首の後ろのうなじを真っすぐにすると、重い頭が背骨を通じて直接骨盤で支える感じとなり、頭の重さを感じなくなります。
仙腸関節が締まると、左右のお尻(腸骨)も股関節と連続した足のようになり、実質的に足が長くなり歩幅が広くなります。
足裏で地面を踏むと、地面反力によって自然と背骨が前に押し出されるようになります(まず身体を前に出す)。
併せて、締まった肛門から臍の方へ引き上げるように力を入れると(腹を張る。腹式呼吸にもなります)、重力に平行なまま背骨が前に重心移動することでスムーズに歩くことができます。
この場合、太腿の後ろのハムストリングスが鍛えられます。この筋肉には姿勢の改善だけでなく血行を促進するなどの働きがあります。
脳の機能維持にも
重力を感じながら背筋を平行に維持することは脳の機能維持にも効果的ではないかと思われます。
閉眼での片脚立ちをどの程度できるかで、脳の老化度がわかるとも言われます。
このような姿勢で歩くことは老化防止にも効果的ではないかと思われます(今のところ、私も年齢の割には若く見えると言われることがあります)。
(初出:ぎょうせい・月刊「税」・2024年10月号)