仕事や運動などによって身体の機能低下が起こると「疲れた~」という「疲労感」とともに、無意識に活動が低下します。
これが「疲労」です。1日休めば回復するような「生理的疲労」が一般的ですが、うつ病や慢性疲労症候群のような「病的疲労」と考えられるものもあります。
疲労感とは
疲労によって細胞に負荷がかかると、タンパク質の合成が止まり(細胞の動きが止まる)、代わりに産出された炎症性サイトカインが脳に伝わって疲労感を齎すと言われています。
疲労感は使われすぎた体の組織が障害を受けないよう警告を発する重要な感覚です。ただ、留意すべきことがあります。
例えば、命に係わるような場面での疲労感による行動抑制は死に直結します。そこで強いストレス場面ではアドレナリンなどによる興奮作用によって疲労感が抑制されるようです。しかし、疲労による細胞への負荷は蓄積され続けますので、心不全などの臓器障害で突然亡くなる過労死の原因となることがあります。
また、疲労感の抑制の段階を過ぎると疲労感が一気に高まり疲労困憊という状態になってしまいます。
栄養ドリンクなどの抗酸化成分が肝臓に働くと脳は疲れていないと解釈するようです。
ただ、心臓、脳、筋肉など他の身体の組織の疲労を抑制していないようなので要注意です。
また、好きなことをしていると「疲労感がマスクされる」場合があり、疲労に気付かず、心筋梗塞や脳卒中などで急死する場合もあります。
生理的疲労そのものを回復させるには、逆説的ですが軽い運動に効果があるようです(アクティブレスト:積極的休養)。
ビタミンB1の不足
玄米・豚肉・うなぎ・枝豆などに豊富に含まれるビタミンB1の不足が疲労回復力を低下させることは有名です。
玉ねぎ・ニラ・ニンニク・ねぎなどに豊富に含まれるアリシンを一緒に摂取すると吸収率が高まります。
一方、白米ではビタミンB1は摂取できず、飲酒によってビタミンB1が体内で消費されてしまうことなどには注意が必要です。
また、米糠、玉ねぎやリンゴ、マスやカツオの筋肉、鶏の胸肉などに含まれる、疲労そのものを回復させる栄養成分にも留意することが大切でしょう。
まとめ
なお、回復力と年齢との間には明らかな相関関係はないと言われる一方、運動不足は回復力を弱めます。
高齢でも適度な運動が大切ですね。
(初出:ぎょうせい・月刊「税」・2024年11月号)