HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

超高齢時代をどう生きるか~あなたに届けるキーワード~

第9回 飽食の時代に適さない人間の身体

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

現生人類の直接の祖先となるホモ・サピエンスは、約20万年前に出現して狩猟採集生活を送っていました。

それが、約1万年前になると、食料を生産・貯蔵し、牛や豚などを家畜として利用する農耕生活を始めます。

食料生産革命です。地球の人口も緩やかに増加したようです。

 

 

 

18世紀になると、輪作と家畜の増加により食料の生産を飛躍的に増加させた農業革命が英国から始まりました。

人口が急激に増えるとともに、多くの人手が農村から都市に移動し、産業革命を支えたのです。

20世紀に入ると、農薬、化学肥料、品種改良、灌漑設備の導入などによる近代農業が始まります。

農作物の増産に加え、食品添加物の使用により長期間保存も可能となり、加工食品も増えました。

かつて「地産地消」であった食料は、世界を流通する商品になったのです。

 

 

 

飽食の時代

 

 

我が国でも、輸入小麦で作るパンや麺類などが多く食べられるようになりました。

その反面、米の消費は1962年度をピークに4割まで減少しています。

加工食品を含めて飽食の時代が到来するとともに、食料自給率の低下という国家安全保障上のリスクが顕在化しています。

世界に目を向けると、食料の約4割が家畜の飼料として消費されるとともに、先進国に食料が集中する結果、2023年には約7億5千万人もの人が飢餓に直面しています。

一方、食料が集中する先進諸国においては、食べ過ぎによる生活習慣病という大きなリスクに晒されています。

20万年かけて進化してきた私達の身体は、飽食には適していないようなのです。

 

 

 

活動のエネルギー源

 

 

活動のエネルギー源は主に体内の糖質脂肪です。

糖質は脳と筋肉のエネルギー源で直ぐに使われますが、体内貯蔵量も少なく筋肉を使えば脂肪より先に枯渇します。

一方、私達は、効率的で豊富なエネルギー源として脂肪を貯蔵しています。

ところが現代の私達は、狩猟採集時代とは大きく異なり、運動せずに次々と糖質を補填する生活が可能です。

その結果、脂肪を有効に活用することなく糖質過多の日々を送り、血管を痛め、心臓、脳、網膜(眼)、腎臓など全身様々なリスクに晒されているようなのです。

 

 

 

まとめ

 

血管とともに身体は老いていくとも言われます。

本来の身体機能に見合った生活を取り戻すという視点が重要ですね。

 

(初出:ぎょうせい・月刊「税」・2024年12月号)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
猿渡 知之

猿渡 知之(さるわたり ともゆき)

大正大学地域構想研究所 客員教授

経歴

1961年 熊本県出身
1985年 東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省
2020年 総務省退職後、株式会社日本経済研究所理事を経て、東日本電信電話株式会社特別参与(現在)

総務省での主な地域政策業務歴

自治政策課理事官・企画官(2001年4月~2003年8月)
高度通信網振興課長(2009年4月~2011年3月)
地域政策課長(2012年4月~2015年7月)
地方創生・地域情報化等の担当審議官(2015年7月~2018年7月)

自治体での勤務歴

京都府総務部長・副知事(2003年8月~2009年3月)をはじめ、青森県庁、栃木県庁、千葉県庁、大阪府庁において勤務

主な著書

「超高齢時代を乗り切る地域政策~地域政策構想技術リスキリングノート~」(大正大学出版会2023年)
「超高齢時代を乗り切る地域再生の処方箋」(ぎょうせい2022年)
「自治体の情報システムとセキュリティ」(学陽書房2019年)
「公的個人認証のすべて(共著)」(ぎょうせい2003年)