アルツハイマー病は、脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、シナプスを破壊することが原因と考えられたので、その産出を阻害したり除去したりする薬が開発されてきましたが、効果が無かったようなのです。
一方、アメリカのデール・ブレデセン博士は炎症や栄養不足などの多様なリスク因子に対する脳の防御反応の一環としてアミロイドβが蓄積されたのであり、多様なリスク因子そのものを取り除く治療を実践し「アルツハイマー病の終焉」を著しました。同書の中で博士は、現代人の生活スタイルそのものがリスク因子の連続であることを示しました(「アルツハイマー病になる方法」)。
短時間の浅い眠りから目覚め、今日一日の課題を考えてしまいます(ストレスで、海馬にダメージ)。
朝食はパンにジュース、珈琲には大量のローファットミルクを入れました(小麦のグルテンが胃腸内膜に穴を開け、砂糖はインスリンの働きを悪くし、乳製品で炎症を誘発)。
昨晩の夜食から12時間を経過していません(細胞のオートファジーが発揮されずアミロイドβなどの不要なタンパク質のかけらが残存)。
通勤は車です(運動せず、日差しも浴びない)。
午前中にチョコチップマフィンをつまみ、ランチはサンドイッチにソーダを飲み、チョコレートケーキを頬張りました(高血糖にグルテン、トランス脂肪を摂取)。
食後に歯磨き・デンタルフロスの出番はありませんでした(口腔内が不潔で全身の炎症が促され、脳への有害物質の流入を防ぐ血液脳関門をも破壊)。
午後も動かずに、甘い飲み物でひたすら糖を消費します。
帰りも車で、交通渋滞のイライラが続きます(高くなった血圧が有害物質の血液脳関門通過を後押し)。
夕食は、グルテンたっぷりのパスタに、大きなフライを食べました(終末糖化産物AGEとトランス脂肪を摂取)。
夜はTV画面に釘付けで、チーズケーキを食べて寝ました(運動せず)。
ブレデセン博士によれば、このような生活スタイルが無症状のままアルツハイマー病を進行させるというのです。私達も思い当たる点が多々あるのではありませんか?
食事・運動・ストレスコントロールなど、今からでも生活スタイルの見直しが必要ですね。
(初出:ぎょうせい・月刊「税」・2025年1月号)