HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

超高齢時代をどう生きるか~あなたに届けるキーワード~

第17回 老化を遅らせ病気を防ぐ

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目次

  • フリーラジカル理論
  • 加齢に伴う機能低下
  • まとめ

 

加齢プロセスの研究が進み、がん、糖尿病、脳血管疾患、運動器疾患、認知症など、高齢者に多くみられる疾患において、ライフスタイルの影響が着目されるようになっています。

 

 

フリーラジカル理論

 

 

20世紀初頭には、心拍数300/分を超すマウスの寿命が約2年で、100/分~160/分の猫の寿命が約15年であるなどの事実から、体重当たりの酸素消費量の大きい動物の寿命は短いと考えられ、フリーラジカル理論へと展開します。呼吸によって取り込む酸素の一部がフリーラジカル化した活性酸素(対をなさない電子を持つ分子)となり、他の分子を攻撃し電子を奪い酸化反応の連鎖(酸化ストレス)が生じるというものです。

一方、DNAの損傷を防ぐため抗酸化システムが存在し、DNA損傷を修復できずに分裂が止まった老化細胞に対しては、アポトーシスという細胞死のプログラムが発動され、老化細胞を異物として破壊するT細胞という免疫機能もあります。このように、私達の身体には、約37兆個の細胞活動を安定して恒常的な状態に保とうとする仕組み(恒常性=ホメオスタシス)が備わっています。

 

 

加齢に伴う機能低下

 

 

しかし、酸化ストレスを抑制する抗酸化システム機能も、アポトーシスに誘導する機能も、T細胞などによる免疫機能も加齢により低下してしまうのです。ただ、これら加齢に伴う機能低下は、食事や運動、ストレスコントロールなどのライフスタイルのあり方によって、ひとり一人大きく異なる可能性が明らかにされてきています。

また、細胞分裂するごとに短くなるテロメア(染色体の末端のタグ)は、ある程度短くなると分裂できなくなるので「命の回数券」と呼ばれ、サーチュイン遺伝子は染色体を安定化させるので長寿遺伝子と呼ばれます。テロメアを延ばし、長寿遺伝子を活性化させれば健康長寿に繋がるのではと期待されますが、そのポイントもライフスタイルにあるようです。

 

 

まとめ

 

病気を防ぎ健康寿命を延ばすためには、日々のライフスタイルの工夫によって老化を遅らせるよう努めることが求められているのです。

 

(初出:ぎょうせい:月刊「税」6月号)

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猿渡 知之

猿渡 知之(さるわたり ともゆき)

大正大学地域構想研究所 客員教授

経歴

1961年 熊本県出身
1985年 東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省
2020年 総務省退職後、株式会社日本経済研究所理事を経て、東日本電信電話株式会社特別参与(現在)

総務省での主な地域政策業務歴

自治政策課理事官・企画官(2001年4月~2003年8月)
高度通信網振興課長(2009年4月~2011年3月)
地域政策課長(2012年4月~2015年7月)
地方創生・地域情報化等の担当審議官(2015年7月~2018年7月)

自治体での勤務歴

京都府総務部長・副知事(2003年8月~2009年3月)をはじめ、青森県庁、栃木県庁、千葉県庁、大阪府庁において勤務

主な著書

「超高齢時代を乗り切る地域政策~地域政策構想技術リスキリングノート~」(大正大学出版会2023年)
「超高齢時代を乗り切る地域再生の処方箋」(ぎょうせい2022年)
「自治体の情報システムとセキュリティ」(学陽書房2019年)
「公的個人認証のすべて(共著)」(ぎょうせい2003年)