目次
- 本来の治療とは
- まとめ
戦前からの昭和の時代に天才治療家として名を馳せた野口晴哉に「治療の書」という著作があります。
野口は、人間本来の生命力を働かせるため生命エネルギーの動向に着目して治療を行っていたようです。
治療は患者自身が日常生活において為すものです。食べること、眠ること、休むことなどの生活行為を、内なる要求を直感しながら行うことで生命力が回復するようです。
食べたいのに「食えねば」餓死し、食べまいとして「食わねば」断食療法となります。
この一字の違いを味わうことが健康への道です。「眠れぬこと」と「眠れぬと思っていること」の見分けも大切です。食事も睡眠も内からの要求に従うことが本来で、時計の針の奴隷になるのは本末転倒なのです。
本来の治療とは
そもそも「生きがい」とか「何の為に生きるのか」とか、人間が勝手に作った目的のため、あくせく命を削っていませんか。生きることが何なのかを人間が知ることはできないはずです。太陽が何のために輝き、空が何のために青いのかを人間が決めることができないのと同じことです。
深く静かに息をして、鳩尾の辺りを空虚に保ちましょう。そこに内なる直感が湧いてきます。
しかし、心配や悩み、怒りなどがあると鳩尾は塞がれて苦しくなってきます。
利害得失、毀誉褒貶といったものへの執着が直感を塞ぎ、生命エネルギーを消耗させるのです。
雨が降れば傘を差し、雪降れば衣をまとい、地球に乗って宇宙を闊歩しているのが私達です。静かな息で内に乱れ無き時、眼には見えず、耳に聞こえずとも、心静かなれば、宇宙と一体となり直感を体験します。私達の生命エネルギーが宇宙の秩序と調和する状態に導くのが、本来の治療なのです。
まとめ
生きていることそのものに快を感じ、最後の一瞬まで生きるを望まず、死するを怖れず活き活きと生きる。
疲れて眠りを求めるごとく天寿を全うすることが宇宙における人間の在り方であり、「あるに在らしむること」が野口の治療哲学であったようです。
(初出:ぎょうせい月刊「税」9月号)