「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉がありますが、これはラテン語の原文の誤訳だそうです。
怒り、不安、妬みなどのマイナスの感情が大いに健康を害することは明らかで、健全な肉体のためにもストレスコントロールが求められる所以です。
怒りや不安などの感情
外部からの刺激に対して怒りや不安などの感情が生じると、私の場合、自律神経が集まっている鳩尾(みぞおち)辺りが苦しくなります。ここで感情に着目すると、自分が怒っているのではなく、怒りという感情の現象が発生しているなあ、と観察できます。怒りなどの感情も、これまでの記憶や悪い習慣の反射効果に過ぎない場合が多いので、記憶の上書きに努めるのですが、坐禅のような姿勢で骨盤を立ててくると鳩尾の「もやもや」とともに感情も消えてしまう経験ができて助けられています。
不安については、心臓手術の際に貴重な体験をしました。事前に「術式」の説明を受けたところ、家人は不安で食事も喉を通らないほど心配しました。ただ、私には不安が湧いてこなかったのです。胸骨を切開して左右に広げ、心肺を停止させて大動脈弁と上行大動脈を取り替えるという術式の内容は、私には大きすぎたのです。医療スタッフを信頼し、神に委ねるしかありませんでした。すると、不思議なことに幸福感すら生じたのです。
振り返ると、私の人生は不安続きでした。的中した不安も多々ありました。けれども、今は気分よく日々を送っています。あの不安や悩みは必要なかったのではないか。自分が受け入れたくないものを不安として拒んでいたのかもしれません。私の我が儘と言うべきものも多かったように思います。
まとめ
これからも「死」をはじめ不安の種は尽きません。
ただ、どんなに不安を感じても受け入れるしかないものがあります。
受け入れたくないという感情のストレスの方が問題で、受け入れてしまえば何とかなるようにも思います。
そう思うと、人生は楽しめるものかもしれません。
(初出:ぎょうせい月刊「税」10月号)