HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

食コラム

秋の養生

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厳しい夏の暑さ、そして長い残暑を越えて、過ごしやすい秋が訪れ始めました。しかし、季節の変わり目は体調を崩しやすく、せっかくの秋を楽しめないこともあります。

季節ごとの身体の状態に合わせて適切な食材を選び、身体のバランスを整えることが食養生の考え方になります。それは、季節にとれた旬の食材を身体の体質に合わせた食べ方が重要です。幸いにも熊本は農業県であり、自分の体質を知り、地元でとれた新鮮な旬の野菜や食材を使用して、自分の体質に合わせたレシピで身体を調えましょう。

【食養生】とは食事を通じて心身のバランスを整え、病気を予防し健康を維持する東洋医学の養生法です。

 

食養生の基本的な考え方

 

 1) 自然との調和(天人合一)
  人間の体は自然の一部であり、季節や環境の変化に応じて食事を調整することが重要とされます。

 2) 心身のバランス(陰陽平衡)
  食材の性質を活かして、体の「陰」と「陽」のバランスを整えることが健康維持につながります。

 

陰陽五行とは・・・この世のすべてのものは陰と陽に分けられ、さらにすべてのものは、木・火・土・金・水の五行からなるとする古代中国の哲学です。
例えば、太陽に照らされる日中は「陽」で、月あかりの夜間が「陰」、男性は陽、女性は陰など、陰陽思想は、万物が「陰」と「陽」という相反するエネルギーで成り立つという考え方です。体質や症状に応じた食事によってこのバランスを保つこと、これが食養生の基本的な考え方となります。

 3) 薬食同源

 

「食べ物も薬と同じように体に効能がある」という考え方で、身近な食材を使って健康を支えることができます。

 

薬食同源とは・・・日本や中国には四季があり、そこに暮らす人々の身体も四季の移り変わりに従って変化しています。身近にある食材には、単に栄養素があるだけでなく、それぞれの味や性質に基づき病気を予防したり、治したりする効能があります。それらの効能を知り、うまく利用すれば身体のアンバランスを調整し、健康な身体を維持することができます。まさに食べ物は食べるクスリと言ってもよく、これを中国では「薬食同源」と表現しています。

 

 4)気(き)・血(けつ)・水(すい)は健康のキーワード

 

中国の伝統医学(中医学)では「気・血・水」が体を維持するための大切な要素と考えています。食養生は、漢方薬、鍼灸、気功などとともに中医学の養生法の一つです。毎日、自分の身体に会った食事を実践して未病を治し、健康になるための身近で確かな療法なのです。

 

 

食物には五味があります。

寒い時にピリ辛のものを食べて身体がぽかぽかしてきた経験はありませんか?これは辛い味のものに「気」「血」のめぐりを良くする作用があるからです。

五味(ごみ)とは・・・食材の味(甘・辛・酸・苦・鹹)によって内臓の働きに影響を与えます。

 

<食味>

 

甘:(甘い)

自然な(砂糖によらない)甘味をもつ食物には、滋養強壮作用があり、消化器の働きをよくし、虚弱体質を改善。痛みを和らげる働きも。但し、とりすぎると逆に胃腸の働きを弱め、骨を弱めます。

 

辛:(辛い

発汗解熱作用があり、「気」「血」のめぐりをよくします。呼吸器にも働き、かぜの初期の寒気、くしゃみ、鼻水には辛みのある生姜やねぎが良く効きます。摂りすぎると熱くなり精気を消耗します。

 

酸:(すっぱい)

自律神経のコントロール作用がある「肝」のはたらきをよくするため、イライラ、怒りっぽい、憂うつ、不安などの症状を改善。汗・尿、便などの排泄物を必要以上に排出させない収斂作用があり、多汗、寝汗、夜間尿、頻尿、下痢も改善。とりすぎると胃を弱め、筋肉を委縮させます。

 

苦:(苦い)

利尿、消炎、解毒、鎮静、解熱作用があり、心臓、血管など循環器の働きを良くし、高ぶった精神状態を沈めます。高血圧、赤ら顔、怒りっぽい、不眠、多夢などを改善。摂りすぎると胃腸の調子を崩します。

 

鹹(かん):(塩辛い)

塩気のある(鹹い)食物は、泌尿器、生殖器官、ホルモンのはたらきをよくし、不妊症などの症状を改善。また、新陳代謝を高めるため、ガングリオン、いぼ、子宮筋腫などのしこりや塊を縮小傾向や便秘解消効果も。摂りすぎると「血」のめぐりが悪くなります。

 

食物には五性があります。

 

身体の寒熱(寒気、熱)のバランスを整えます。

 

五性(ごせい)・・・

食材の性質(温・熱・寒・涼・平)により体を冷やしたり温めたりする作用があります。

温性・熱性 身体を温め、寒気を払い、「気」「血」の流れをよくする働きがあります。
ラム肉、こしょう、唐辛子、牛肉、にんにく、生姜など
平性 温熱性でもなく、寒涼性でもない
米、芋、豆、ごまなど
寒性・涼性: 利尿・消炎作用があり、身体の余分な熱や毒素を追い払い、興奮を沈める働きがあります。
すいか、ニガウリ、柿、茄子、セロリなど

 

では、さっそくあなたの体質を調べてみましょう。

体の中で陰・陽のバランスがとれ、中庸に近づけることが理想的な状態です。ご自身の反対の性質の食物を日常的に選んでみましょう。

 

あなたの陰陽体質度 チェック&チェック

チェック項目 陽性 中庸 陰性
体温は? 高い 36.3度前後 低い
まぶたの裏の色は? 赤っぽい 薄いピンク 白っぽい(貧血がある)
顔色は? 赤ら顔 薄いさくら色 青白い
唇の色は? 濃い赤 ピンク 薄いピンク
声の力は? 大きすぎる 力強い かぼそい
話すスピードは? 早口 ふつう 遅い
行動は? せっかち ふつう ゆっくり
食欲は? 大食 ふつう 小食
血圧は? 高い ふつう ふつう
大便の量と硬さ 少なく、硬い。 バナナ大でふつうの硬さ 多く、ゆるい
大便の色は? 黒っぽい 黄色~こげ茶色 白っぽい緑便
尿の量と回数 1日で2~3回 濃い 1日で3~4回 薄い 1日で6回以上
尿の色は? 濃い 薄い 赤っぽい

 

食事のワンポイントアドバイス

陽性度の強い人 主食は、入り玄米ご飯、麺類やパンが向いています。
おかずは、季節の野菜料理を、 主食と同量か、それ以上摂って構いません。
常備菜はなくても可。
陰性度の強い人 たけのこ、しいたけなど極陰の食べ物を避けます。主食はあずきや雑穀入りの玄米ご飯(ごま塩 添え)を主にパンや麺類は陽性の調理法(火を入れる) で少量にとどめます。おかずは、 身体をあたためる根菜や常備菜を毎日摂ります。玄米ご飯をよく噛み、味噌汁を飲む食事を基本にします
中庸の人 表の範囲内で自由に食べてください

 

体質に合わせた食事と生活

• 陽性体質ならば → 体を冷やす食材(陰性食材)を取り入れる

• 陰性体質ならば → 体を温める食材(陽性食材)を取り入れる

 

 

秋の養生におすすめのレシピ

 

● 陽性の方

秋の養生におすすめのレシピ 陽性の方

大根生漬け

【材料1回分】
 新鮮な大根 1㎏
 人参    0.3kg
 A)濃口醤油 200cc
   酢    100cc
 砂糖  150g
 たかのつめ  適宜
 切り昆布   適宜

作り方)
① 大根、人参は半月に切る。大根が大きい場合はいちょう切り、耐熱ボウルに入れておく

② Aを合わせて火にかけ、煮だったら切った材料の上から回しかける

③ 鷹の爪、切り昆布を入れ、ラップし、自然に水が上がったら出来上がり

 

● 陰性の方

秋の養生におすすめのレシピ 陰性の方

生姜入り養生きんぴら

【材料4人分】

ごぼう  50g
人参   50g
れんこん 50g
生姜   15g
ごま油  小さじ1/2
丸大豆しょうゆ 小さじ1
梅酢   1滴
水    300c

作り方)
① れんこんはいちょう切、しょうがは千切り、にんじん、ごぼうは斜めにスライスしてそれを千切りにする。ごぼうはあくが強いので最後に切り水にはさらさないでおく。

② 蓋のできる小さな鍋にごま油を入れ、すぐにごぼうを加えて弱火にかける。そこに梅酢を1滴落とし、手早くからめて、蓋をして蒸し煮にする。

③ ときどき、蓋を開け、焦げないように混ぜる。もし水分が足りないときは少し水を加える。ごぼうの土臭いにおいが消え、甘い香りに変わるまで混ぜ続ける。

④ れんこん、にんじん、しょうがを入れ混ぜ、蒸し煮にしていく。野菜が汗をかき水分が出てむらなく蒸し煮ができたら水を加える。

⑤ 蓋を外してゆっくり煮る。

⑥ 野菜全体が柔らかく成ったら、丸大豆しょうゆを加え、煮汁の水分が無くなるまで煮る

 

 

まとめ

 

夏から秋の季節の変わり目で見落としがちな体質に合わせて体を「温める」こと、「冷やす」ことを意識する際のレシピの考え方

今回は、夏から秋の季節の変わり目で見落としがちな体質に合わせて体を「温める」こと、「冷やす」ことを意識する際のレシピの考え方についてお話しました。

季節の変わり目では、気温や室温に合わせた服装の調整とともに、体感温度の体質・個人差を意識した栄養補給が欠かせません。料理を作る人と料理を食べる人の両方の体感温度をしっかりと把握し、おいしく、楽しく、季節の変わり目を元気に過ごせるように心がけてみてください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

本記事が、季節の変わり目を快適に過ごしたいとお考えの方のお役に立てれば幸いです。

 

 

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田邊 史子

田邊 史子(たなべ ふみこ)

現職:御幸病院 栄養管理科 科長

平成6年介護老人保健施設 ぼたん園(日清医療食品事業所)入職。平成8年 御幸病院栄養管理科を経て、現職。みゆきの里の理念である『食から疾病予防』の考え方を基本に、患者様の栄養管理や栄養食事指導を行っている。平成19年より料理研究家・辰巳芳子先生の「作り手から相手の心へ伝わる命を支えるスープ」の考え方、辰巳先生の弟子である大分県由布院の名旅館玉の湯・山本照幸料理長(現・みゆきの里総料理長)から実践方法を学び、みゆきの里の栄養士・管理栄養士等と、各施設内でスープを提供している。

資格

管理栄養士、がん病態栄養専門管理栄養士、NRサプリメントアドバイザー、栄養経営士、在宅訪問管理栄養士