HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

超高齢時代をどう生きるか~あなたに届けるキーワード~

第28回 自分を赦し、自分を信じる

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父が八十を過ぎた頃だったでしょうか。

酔って足を絡ませ廊下に倒れこんだまま、「こんな人生は認めん」と呟いたのです。

今となっては確かめようもありませんが、何か深く思うところがあったのかもしれません。

衝撃とともに、私には大きな教えになりました。

 

 

過去の悔恨

 

 

年齢を重ねても、過去の悔恨はやっかいです。

思い返す毎に記憶が勝手に膨らみ、暴れまわります。「何であんなことをしたんだ」と自分を責めても、誰も赦してくれません。健康を害す原因にもなり得ますし、不機嫌は周りの人達をも苦しめます。

一方、人生百年時代、老後に夢をと言われます。しかし、長い老後を想像すると、健康を害して寝たきりになったらどうするのだ、老後資金は大丈夫なのかなど、もれなく多くの不安も湧き上がり、止まらなくなります。しかし、平均寿命の延伸は統計数字に過ぎないのです。確かなことは、私は一度死ぬということであり、明日命尽きるかもしれないのです。どうしようもないことをあれこれ想像して不安になることはやめましょう。

過去の悔恨や今後の不安というものは、想像力の暴走(妄想)に過ぎません。過去の言動を反省しながらも、今を生きるためには、過去の自分を赦すしかありません。これからの老後、何が起こるかわかりませんが、何が起ころうと、これまで生きてきた自分を信じるしかありません。仮に不安が現実化した時はもう不安ではないのです。これまでも思い通りにならない日々を乗り切ってきたではありませんか。

過去の悔恨や今後の不安は、どこからともなく湧いてきます。ただ、仕事でも、趣味でも、掃除でも、靴磨きでも、何かに取り組んでいる「今」には、あまり湧いてこないようです。

 

 

まとめ

 

暇であること、特に「退屈」は「妄想の温床」になりがちなので、注意が必要です。

「今日、用事があること」(きょうよう問題)、「今日、行くところがあること」(きょういく問題)が、高齢時代において重要であると強調される所以です。

 

(初出:ぎょうせい月刊「税」12月号)

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猿渡 知之

猿渡 知之(さるわたり ともゆき)

大正大学地域構想研究所 客員教授

経歴

1961年 熊本県出身
1985年 東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省
2020年 総務省退職後、株式会社日本経済研究所理事を経て、東日本電信電話株式会社特別参与(現在)

総務省での主な地域政策業務歴

自治政策課理事官・企画官(2001年4月~2003年8月)
高度通信網振興課長(2009年4月~2011年3月)
地域政策課長(2012年4月~2015年7月)
地方創生・地域情報化等の担当審議官(2015年7月~2018年7月)

自治体での勤務歴

京都府総務部長・副知事(2003年8月~2009年3月)をはじめ、青森県庁、栃木県庁、千葉県庁、大阪府庁において勤務

主な著書

「超高齢時代を乗り切る地域政策~地域政策構想技術リスキリングノート~」(大正大学出版会2023年)
「超高齢時代を乗り切る地域再生の処方箋」(ぎょうせい2022年)
「自治体の情報システムとセキュリティ」(学陽書房2019年)
「公的個人認証のすべて(共著)」(ぎょうせい2003年)