
「美しく歩く」とは、背筋が伸びてスラっとして、肩の力を抜いて胸を張り気味に歩くといったところでしょうか。
背筋を伸ばすポイントは、背骨の下半分で、みぞおちから骨盤の間にある5個の腰椎です。この腰椎をグーッと前に出してまっすぐ立てることを「腰骨を立てる」と呼んで、坐禅や武道に於いて非常に重要視されてきました。腰椎のラインの辺りが重心なのです。頭から出ると腰が後ろに残り、腰から出ようとすると仰け反ってしまいます。そこで、グーッと腰椎を前に運ぶことで、重心移動によって身体全体が無理なく前進できるのです。
「楽に歩く」とは

腰骨が立つと、肩の力が抜けて左右の肩甲骨が背中側に寄って、胸を張った感じになります。逆に腰骨が後ろに緩むと、猫背になり、肩甲骨も内側に閉じてしまい前かがみの姿勢になってしまうのです。腰が曲がるリスクの始まりです。
左右の骨盤の間には仙骨があり、その仙骨の上に腰椎が載っています。スラっと伸びた背筋の真下には、足の指の付け根辺り(母指球)が来ます。地球の重力に引っ張られた私達の身体は、全体重として母指球を通して地球と押し合います。右足を前に出す場合には、母指球からの地面反力が、左踵⇒左股関節⇒左骨盤⇒仙骨とその上の腰椎と無駄なく連動することで、私達の身体は楽に前進し、仙骨が前に出ると右足が前に振り出されます。
このように歩くと、左右の骨盤の真ん中の仙骨を支点に、両サイドの骨盤も足の一部のように動きますので、実質的に足を長く使い、お尻の筋肉である大殿筋を適切に鍛えることになるようです。さらに、股関節周りの筋肉も柔らかく血流も良くなり、大殿筋とともに腿裏のハムストリングスという大切な筋肉も鍛えられます。美しく楽に歩くことで必要な筋肉トレーニングにもなります。
まとめ
このような歩き方は、地球の重力の中で、私達の身体が本来的に想定した機能を果たすことに他なりません。そのことが武道の極意であり、モデル歩きの秘訣なのです。
(初出:(株)ぎょうせい月刊「税」5月号)






