HOLISTIC HEALTH JOURNAL

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超高齢時代をどう生きるか~あなたに届けるキーワード~

第40回 天命

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 「論語」の中で孔子は「五十にして天命を知る」と言っています。学び続けた結果、天命を理解したのか、あるいは、天命が降って来たのか、疑問に思っていました。

 この地上で学習し続けることで天命の理解に達することなど、あり得るのでしょうか?とすると、天命はやはり降りてくるのでしょうか?その場合、天命は日本語なのか、外国語なのか?やはり人間の言葉で天命が降りてくることはあり得ないのではないか?などなど、あれこれ考えていました。

吉田松陰は「かくすればかくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂」と詠みました。ここで「大和魂」と表現されているものも天命だと思います。天命という言葉には、それまでの切実な経験の積み重ねの重みが感じられます。自分が希望したり期待したりすることを超越して、この宇宙で自分に降りかかってくる役割のようなものを感得することではないでしょうか?西郷隆盛の「敬天愛人」や夏目漱石の「則天去私」も、天命を感得した結果得られた境地だと思います。

 人が天命に到達するのか?天命が人を捉えて降りてくるのか?恐らく相互作用ではないでしょうか。天地の間で暮らしている私達人間が出会う諸体験を通じ直観という方法で感得されるのが天命かもしれません。

 よって、行動しなければ天命を知ることはできません。ただ、行動したからといって、自分に都合の良い結果が生じなかったのは私だけではないでしょう。ある期待を持って行動したけれども、結果は期待に反するものである、けれども、それらの結果を繋ぎ合わせると何となく自分の歩むべき道が浮かんでくる、という感覚がありませんか?この道は嫌いだ、と言っていても救われません。天命を受け入れることで「道に安んずる」という生き方ができるのではないでしょうか?

 天才的治療家、野口晴哉の「治療の書」に「宇宙動きて我動く也 我が動くも是宇宙の動き也」とあります。天命に則った私達の「道」も宇宙の星の軌道の如きものなのかもしれません。

 

心(精神)と身体の関係

 

 「天命を知る」ことを少し違う視点で捉えると、私達が宇宙のエネルギーに依って生かされていることに気付くことかもしれません。宇宙の成分比率では、宇宙を膨張させている物質ではないエネルギー(ダークエネルギー)が73%と言われています。物質のうち、水素をはじめとする原子を作っているものは4%しかありません。残り23%はダークマターと呼ばれ、重力を有することしか分からない暗黒物質なのです。しかも原子の集合体である、私達が通常知っている物質世界は1%程度だと言われています。その原子の一定の集合体が私達人間の身体なのです。何らかのエネルギーによって身体として纏まっているのですが、常に宇宙を膨張させるエントロピー増大の法則の影響下にあって、私達の身体を構成する物質も、やがて原子などの極小粒子とエネルギーに拡散することになります。

 このように私達の身体は何らかの宇宙のエネルギーによって運用されています。そして、私達の心(精神)も物質ではないエネルギーだとすると、心(精神)は私達の身体を運用している主体だ、ということになりそうです。

心(精神)と身体との関係は、人類の大きなテーマです。王陽明は難病に苦しむ弟子に「常に快活なるはすなわち是れ功夫(くふう)なり」と言いました。病は身体が病んでいるのであって心が病んでいるのではありません。身体が病むと意志が弱くなりがちですが、常に快活な気持ちでいることが修行であると示しました。

 

まとめ

 

 デカルトは、情念も身体の生理的反応だとします。恐怖も怒りも涙も、私達が何かを考え始める前に噴出している身体現象ですので、これらをどう扱うかが心(精神)の腕の見せ所となってきます。その能力を適切に発揮するには、怒りや怖れ、悲しみといった感情の波の中で、自分の判断が独り善がりなものではないこと、欲得や過去の個人的な経験の結果に引き摺られていないことなどについて、常に自問反省を繰り返さなくてはなりません。感情をコントロールし、これまでに身につけた偏見や先入観を排するには、自己観察を徹底して尽くしていくしかありません。

その結果、デカルトも言うように、感情や身体の感覚を観察している心(精神)こそが「われ」であり、本当の自分であることに得心がいった時、感情の乱れや死の恐怖などからも解放されて天命を感得できるのかもしれません。

 

(初出:株式会社ぎょうせい「税」6月号)

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猿渡 知之

猿渡 知之(さるわたり ともゆき)

大正大学地域構想研究所 客員教授

経歴

1961年 熊本県出身
1985年 東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省
2020年 総務省退職後、株式会社日本経済研究所理事を経て、東日本電信電話株式会社特別参与(現在)

総務省での主な地域政策業務歴

自治政策課理事官・企画官(2001年4月~2003年8月)
高度通信網振興課長(2009年4月~2011年3月)
地域政策課長(2012年4月~2015年7月)
地方創生・地域情報化等の担当審議官(2015年7月~2018年7月)

自治体での勤務歴

京都府総務部長・副知事(2003年8月~2009年3月)をはじめ、青森県庁、栃木県庁、千葉県庁、大阪府庁において勤務

主な著書

「超高齢時代を乗り切る地域政策~地域政策構想技術リスキリングノート~」(大正大学出版会2023年)
「超高齢時代を乗り切る地域再生の処方箋」(ぎょうせい2022年)
「自治体の情報システムとセキュリティ」(学陽書房2019年)
「公的個人認証のすべて(共著)」(ぎょうせい2003年)