
みゆきの里では、「地域の人々、ご利用者、ご家族、そして職員自身の幸せを願い、保健・医療・福祉の総合力を発揮して健康生活のベストパートナーとなること」をミッションに掲げています。この理念は、日々の食事づくりを担う栄養科の取り組みにも深く息づいています。
今回は、ぼたん園栄養科で生まれた“ひとつの気付き”をご紹介します。 それは、何気なく添えられているレモンのひと切れから始まりました。
レモンを絞る体験から見えたこと

皆さんは普段、レモンをどのように絞っていますか。親指と人差し指で軽く押す人、手のひら全体で握るように絞る人、絞り器を使う人など、方法はさまざまです。
しかし、高齢者の方にとっては、どの方法も簡単ではありません。理由は、加齢に伴う握力の低下です。指先の力が弱くなると、レモンを押しつぶす動作そのものが難しくなります。
ある日の献立にレモンが添えられていたことをきっかけに、管理栄養士と調理職員の間でこんな会話が生まれました。
管理栄養士:「私たちは普段、どうやってレモンを絞っていますか?」
調理職員:「親指と人差し指、中指を使って絞っています」
管理栄養士:「若い私たちはそれで絞れます。でも高齢者は指に力が入りにくく、この切り方では絞れない方が多いんです。では、体験として親指と“小指”だけで絞ってみてください」
実際に試してみると、誰ひとりとしてうまく絞れませんでした。その瞬間、職員全員が「絞れないレモンが、ただの飾りになってしまう現実」を体感したのです。
レモンには、魚の臭みを和らげたり、ビタミンを補給したりする大切な役割があります。「せっかく添えるなら、全員に絞って味わってほしい」その管理栄養士の想いが、厨房スタッフに強く伝わった出来事でした。

小さな工夫が“相手を想う気持ち”に繋がる
この体験をきっかけに、厨房では自然と「どう切れば絞りやすいか」という工夫が始まりました。
- 1/8にカットする
- 内側の白い部分(ワタ)を取り除く
- 力を入れなくても果汁が出るよう柔らかくする
こうした工夫は一見すると小さな変化ですが、利用者の「自分でできた」という喜びにつながります。そしてその積み重ねこそが、みゆきの里のミッションである“相手を想う姿勢”そのものです。
厨房スタッフが自ら考え、行動に移してくれたことは、栄養科としても大きな誇りとなりました。

ご家庭でも出来る気付きの体験
今回のレモン絞り体験は、ご家庭でも簡単に再現できます。親指と小指だけでレモンを絞ってみると、高齢者の方が日常で感じている「ちょっとした困難」を実感できます。
普段は当たり前にできる動作でも、
- 握力の低下
- 麻痺
- 関節の痛み など
があると、途端に難しくなります。
ご家族の状態に合わせて、レモンの切り方や食材の形状を工夫することは、生活をより快適にする大きな一歩です。
たかがひと切れのレモン。 しかし、そのひと切れに“相手を想う気持ち”を込めることは、 命を支えるスープと同じくらい深い思いやりにつながるのです。






