HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

医療

第七二回東洋医学療法の紹介コラム55薬膳茶④中国茶の分類の一

 

日常生活に欠かせない茶は誕生から長い歳月を経て、茶の作り方や飲み方によって分類され、中医学の理論を基に一つの文化として発展してきました。

 

 

 

六大茶類

 

茶の分類方法は数多くありますが、最も広く認められているのは「六大茶類」です。

茶は旧石器時代、生の茶葉を食べることから始まりました。新石器時代に陶器が発明されると茶葉を煎じて食べるようになり、現在でも中国の雲南省の山奥に住む少数民族の間には、新鮮な茶葉に唐辛子の粉末·果物汁·にんにく・塩・湧き水を混ぜて食べる習慣が今日まで残っています。

唐代になると茶を煎じて飲む茶文化が生まれ、宋代には茶の製造技術が進歩して茶(ちゃ)餅(へい)(茶葉を圧縮して餅のように固めたもの)や花(はな)茶(ちゃ)(花の香りをつけた茶葉) が現れました。

明・清代になると、発酵のさせ方や製造方法の違いによって、緑茶・白茶・黄茶・黒茶・紅茶・青茶が作られ、6つの茶の系統が完成しました。

 

六大茶類

分類

代表的な茶

茶色

性質

効能

緑茶

龍(ロン)井(ジン)茶

茶葉:緑色

茶の色:緑色

清熱解毒

白茶

白毫(ハクゴウ)銀(ギン)針(シン)

茶葉:銀色のうぶ毛のようなものが多い

茶の色:薄い

清熱解暑

黄茶

君山(クンザン)銀(ギン)針(シン)

茶葉:白色のうぶ毛のようなものが多く、茶葉は薄い黄色

茶の色:黄色

清熱

黒茶

普洱(ブーアール)茶             

 

茶葉:真っ黒か深褐緑色

茶の色:褐黄色か褐紅色

身体を温める

紅茶

祁門(キームン)茶

茶集:褐紅色

茶の色:金黄色か紅黄色

身体を温める

青茶

烏(ウー)龍(ロン)茶

茶葉:青緑色か、まわりが紅色で中心が緑色

茶の色:金黄色か橙黄色

半発酵で平性なので、どのような目的にも使うことができる

 

 

緑茶の代表、龍(ロン)井(ジン)茶

 

意外に思われるかもしれませんが、中国では緑茶の生産量が最も多く、中国第一茶と称されています。その緑茶の代表が龍井茶で、杭州(こうしゅう)の西湖近辺にある龍井村が主な産地です。

清の時代の乾隆帝 (1711~1799年)が杭州を4回も視察し、この茶を褒めたところから代々の皇帝に愛され、「貢(こん)茶(ちゃ)(皇帝に貢く茶)」となりました。その華麗な茶葉の形、きれいな緑色、芳しい香り、おいしさは「四絶(しぜつ)」といわれ、絵画や詩文にもたびたび登場し、最も上品な茶として高官や貴人たちに愛飲されてきました。

 

日本の緑茶との違いは、香りを重視した作り方をしているところにあります。 日本茶は、旨み、渋み、苦みのバランス、つまり味そのものを重視していますが、中国茶は、味に加えて、香りもとても大切にしています。 緑茶は、茶葉を発酵させない非発酵茶です。

 

龍井茶も非発酵茶で、陰干しした後に揉んで軽く炒るという工程で作られ、自然な風味が残っています。清熱(せいねつ)解毒(げどく)・清心瀉(せいしんしゃ)肝(かん)の作用があるため暑い夏の時期にぴったりで、暑がりの体質、熱性の病気などにおすすめの茶です。また食材としても使われています。

ほかには碧螺(へきら)春(しゅん)、黄山(こうざん)毛(もう)峰(ほう)などがあります。

 

 

参考文献

 

 

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 辰巳洋著.実用中医薬膳学.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 辰巳洋著.薬膳茶のすべて.株式会社 緑書房,2017
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019

 

王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

【経歴】
5代続く中医学医師の家庭に生まれ、幼少の頃より家族から中医学の基礎を教わる。
1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒
総合病院中医科中医師(中医総合科)として勤務                       
1997年 熊本大学医学部第二生理学科に入局、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻
2002年 熊本大学大学院医学研究科修士博士連合課程卒 
医学博士取得(西洋医学)
2016年 南京中医薬大学中医学院に入学、中医学臨床基礎・経方(漢方)医学を専攻
2019年 南京中医薬大学博士課程卒
医学博士取得(中医学) 
2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2020年~ 中国河北中医薬大学 客員教授
1999年~ 御幸病院および複数の医療機関に中医師・研究員・講師として勤務

【資格】

・医師(中国国家資格・中医師)
・医学博士(中国・中医学)
・医学博士(日本・西洋医学)
・自然医学療法医師(アメリカ自然医学学会)

【学会役職】

・世界中医薬学会聯合会 経方専業委員会 副会長
・世界中医薬学会聯合会 治未病専門委員会 常務理事
・日本中医協会 副会長