日常生活に欠かせない茶は誕生から長い歳月を経て、茶の作り方や飲み方によって分類され、中医学の理論を基に一つの文化として発展してきました。
六大茶類
茶の分類方法は数多くありますが、最も広く認められているのは「六大茶類」です。
茶は旧石器時代、生の茶葉を食べることから始まりました。新石器時代に陶器が発明されると茶葉を煎じて食べるようになり、現在でも中国の雲南省の山奥に住む少数民族の間には、新鮮な茶葉に唐辛子の粉末·果物汁·にんにく・塩・湧き水を混ぜて食べる習慣が今日まで残っています。
唐代になると茶を煎じて飲む茶文化が生まれ、宋代には茶の製造技術が進歩して茶(ちゃ)餅(へい)(茶葉を圧縮して餅のように固めたもの)や花(はな)茶(ちゃ)(花の香りをつけた茶葉) が現れました。
明・清代になると、発酵のさせ方や製造方法の違いによって、緑茶・白茶・黄茶・黒茶・紅茶・青茶が作られ、6つの茶の系統が完成しました。
六大茶類
分類 |
代表的な茶 |
茶色 |
性質 |
効能 |
緑茶 |
龍(ロン)井(ジン)茶 |
茶葉:緑色 茶の色:緑色 |
涼 |
清熱解毒 |
白茶 |
白毫(ハクゴウ)銀(ギン)針(シン) |
茶葉:銀色のうぶ毛のようなものが多い 茶の色:薄い |
涼 |
清熱解暑 |
黄茶 |
君山(クンザン)銀(ギン)針(シン) |
茶葉:白色のうぶ毛のようなものが多く、茶葉は薄い黄色 茶の色:黄色 |
涼 |
清熱 |
黒茶 |
普洱(ブーアール)茶
|
茶葉:真っ黒か深褐緑色 茶の色:褐黄色か褐紅色 |
温 |
身体を温める |
紅茶 |
祁門(キームン)茶 |
茶集:褐紅色 茶の色:金黄色か紅黄色 |
温 |
身体を温める |
青茶 |
烏(ウー)龍(ロン)茶 |
茶葉:青緑色か、まわりが紅色で中心が緑色 茶の色:金黄色か橙黄色 |
平 |
半発酵で平性なので、どのような目的にも使うことができる |
緑茶の代表、龍(ロン)井(ジン)茶
意外に思われるかもしれませんが、中国では緑茶の生産量が最も多く、中国第一茶と称されています。その緑茶の代表が龍井茶で、杭州(こうしゅう)の西湖近辺にある龍井村が主な産地です。
清の時代の乾隆帝 (1711~1799年)が杭州を4回も視察し、この茶を褒めたところから代々の皇帝に愛され、「貢(こん)茶(ちゃ)(皇帝に貢く茶)」となりました。その華麗な茶葉の形、きれいな緑色、芳しい香り、おいしさは「四絶(しぜつ)」といわれ、絵画や詩文にもたびたび登場し、最も上品な茶として高官や貴人たちに愛飲されてきました。
日本の緑茶との違いは、香りを重視した作り方をしているところにあります。 日本茶は、旨み、渋み、苦みのバランス、つまり味そのものを重視していますが、中国茶は、味に加えて、香りもとても大切にしています。 緑茶は、茶葉を発酵させない非発酵茶です。
龍井茶も非発酵茶で、陰干しした後に揉んで軽く炒るという工程で作られ、自然な風味が残っています。清熱(せいねつ)解毒(げどく)・清心瀉(せいしんしゃ)肝(かん)の作用があるため暑い夏の時期にぴったりで、暑がりの体質、熱性の病気などにおすすめの茶です。また食材としても使われています。
ほかには碧螺(へきら)春(しゅん)、黄山(こうざん)毛(もう)峰(ほう)などがあります。
参考文献
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 辰巳洋著.実用中医薬膳学.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 辰巳洋著.薬膳茶のすべて.株式会社 緑書房,2017
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019