近年全国的に梅毒の報告件数が増えています。
特に熊本県は人口100万人当たりの件数は全国都道府県で6番目(2024年第3四半期)と多く、熊本県健康危機管理課より度々注意喚起されています。
御幸病院でも入院時のスクリーニング検査にB・C型肝炎に加えて梅毒の項目があるため、今回は梅毒についてQ&A形式でまとめました。
Q1. 梅毒ってそもそもなに?
Q2. 昔の病気と思っていたけど今現在流行ってるの?
Q3. 感染するとどうなるの?
Q4. どうやって感染するの?感染率は?
Q5. 検査はどうやるの?
Q6. 治療は?
Q7. 予防は?ワクチンはあるの?
Q8. 梅毒の抗体ができるなら、治療後はもう梅毒にかからないの?
Q9. 無料で検査できるって聞いたけど?
Q1 梅毒ってそもそもなに?
梅毒は、性的な接触などによってうつる感染症です。
病原体は梅毒トレポネーマという細菌です。梅に含まれる毒ではありません。症状としてみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることがこの病名の由来です。
Q2 昔の病気と思っていたけど今現在流行ってるの?
今流行しています。ペニシリンの普及により、第二次世界大戦後に梅毒の発生は激減しましたが、2011年ごろより増加傾向となっています。年齢分布については、男性は20~50代、女性は20代に多いです。梅毒と診断された症例において、男性の4割が性風俗利用歴あり、女性の4割が性風俗従事歴ありと報告されています。
Q3 感染するとどうなるの?
全身に様々な症状が出ることがあります。検査や治療が遅れたり治療せずに放置したりすると、脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。病期によって、症状の出現する場所や内容が異なります。治療を行わなかった場合の経過は以下の通りです。
Ⅰ期顕症梅毒
感染後数週間 特徴的な症状は陰部や口内の皮疹です。これらの症状は痛みを伴わないことが多いです。治療をしなくても症状は自然に軽快しますが、ひそかに病気が進行する場合があります。
Ⅱ期顕症梅毒
感染後数か月 特徴的な症状は手足、体幹のバラ疹です。発疹は数週間以内に自然に軽快しますが、梅毒が治ったわけではありません。また、一旦消えた症状が再度みられることもあります。
晩期顕性梅毒
感染後数年 特徴的な症状は筋肉や骨、内臓のゴム腫です。また大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられることもあります。現在では、抗菌薬の普及などから、晩期顕性梅毒はまれであるといわれています。
Q4 どうやって感染するの?感染率は?
主に粘膜や皮膚が梅毒の病変部位と直接接触することで感染します。具体的には、性器と性器、性器と肛門、性器と口の接触等です。
梅毒の感染率は高く、感染者と1回性行為をした場合には30%~40%くらいの確率で梅毒に感染します。
また、針刺し事故による梅毒の感染事例の報告は現在のところないようですが、実験室内では感染の報告があり、理論上感染のリスクはあると考えられています。当院のマニュアルでは、梅毒陽性患者の針刺し事故発生時は事故者希望により抗菌薬予防投与が定められています。
Q5 検査はどうやるの?
血液を採取し、梅毒の抗体を確認します。主にTPHA法とRPR法の2つがあり、それぞれ特徴・弱点があります。2つを組み合わせることでより正確に患者の状態を把握できます。
TPHA法
梅毒トレポネーマに対する特異的な抗体を測定するため、梅毒以外ではほぼ陽性になりません(偽陽性が少ない)。しかし悪い点として「梅毒になると治療しても一生涯陽性のままになる」、「感染してから検査が陽性になるまで時間がかかる」の2点があります。
RPR法
「比較的早期(感染してから数週間)から検査が陽性となる」、「治療を反映して数値が低下するため、治療効果を推定できる」点が良いところです。悪いところは「偽陽性が多い(妊娠、膠原病、肝障害、感染症など)」、「梅毒の初期には検査値が上昇しないことがある」点です。
簡単にまとめるとTPHA:過去に梅毒にかかったことがあるか RPR:梅毒の現在の活動性があるかを知ることができます。ただしどちらも感染初期は陽性になりません。
組み合わせの解釈は以下の通りです
TPHA | RPR | 解釈 |
(-) | (-) | 梅毒ではない or 梅毒の極初期(稀) |
(-) | (+) | 梅毒の初期 or RPRの偽陽性 |
(+) | (-) | 梅毒治療後 or TPHAの偽陽性(稀) |
(+) | (+) | 梅毒 or 梅毒治療後 |
Q6 治療は?
一般的にはペニシリン系抗菌薬の内服で治療可能です。神経梅毒などの場合は、抗菌薬の点滴により治療が行われます。また、感染の可能性があるパートナー等も検査を受け、必要に応じて治療を受けることが重要です。
代表的な治療
アモキシシリン 1回500mg 1日3回 4週間 (第一選択)
ミノサイクリン 1回100mg 1日2回 4週間 (ペニシリンアレルギー等の場合)
Q7 予防は?ワクチンはあるの?
ワクチンは存在しません。暴露前予防としては性交渉時のコンドーム着用が基本となります。
しかし最新の予防方法としてドキシペップと呼ばれる暴露後予防(梅毒患者に接触した後に感染を防ぐこと)が確立されつつあります。
ドキシペップとはドキシサイクリン(抗菌薬)を不安な性行為の72時間以内に内服する方法です。これにより梅毒を87%の確率で予防できたとしています。
Q8 梅毒の抗体ができるなら、治療後はもう梅毒にかからないの?
いいえ、適切な対策をしなければ再感染もありえます。
Q9 無料で検査できるって聞いたけど?
熊本県内の保健所では、梅毒を含む性感染症の検査に加え、B型・C型肝炎ウイルス検査を無料・匿名で実施しています。検査を受けるには、電話での事前予約が必要です。
保健所以外にも、県が委託した医療機関で、HIV・梅毒検査が匿名・1,000円で受けられます。
【参考】国立感染症研究所 「梅毒とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/syphilis/392-encyclopedia/465-syphilis-info.html
参考文献
厚生労働省 梅毒についてのQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/syphilis_qa.html
日本感染症学会 梅毒診療の考え方
https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=56