茶に欠かせない水と器
日本では茶葉に湯を注いで作る(煎じる)緑茶のことを「煎茶」と呼んでいますが、中国においては緑茶に限らず茶葉を煎じて成分を抽出する茶の全体を指します。
中国の煎茶には「一是弁別(べんべつ)、二是水、三是火、四是湯、五是器、六是飲」という 6つのボイントが伝えられています。
「弁別」とはよい茶を選ぶことで、加えて、水質や火加減、湯の温度、器も大切であるということです。
水と火
良い水とは
水は、①山の水、②川の水、③井戸の水の順に良いとされています。
山の水でも鎮乳石から出た水、または流れが緩やかな場所の水が最も質が高く、地域では、揚子江の南零の水,無錫恵山寺の水、蘇州虎丘寺の水が良いという記録も残されています。
今は、質が良い市販の水も多く出ていますが、日本の水道水を使っても問題はないでしょう。
特に熊本市及びその近郊地域の水道水は全量、地下水(阿蘇山ろくの伏流水)のため、最適です。
茶のための火
煎じる茶には、水とともに火が大切な要素です。
伝統的に火を熾(おこ)す際は柏(かしわ)や桂(かつら)、桧(ひのき)のような油が多い膏木は避け、炭が最も適しているとされています。
炭がない場合は、桑(くわ)や槐(えんじゅ)、桐(きり)、櫟(くぬぎ)を使いますが、もちろんガスや電気ポット、電磁調理器(IH)などで湯を沸かしても構いません。
茶器
茶器としては、中国の江蘇(こうそ)省宜(ぎ)興(こう)市産の紫(ず)砂(さ)壺(ふ)と湯吞がよく使われています。土と砂で作られ、茶の旨味(うまみ)が最も発揮できる茶器です。この茶器は使うほど茶葉の渋みをまろやかな味に変化させます。
世界に最も影響を与えた茶器は江西(こうせい)省景德(けいとく)鎮(ちん)市の青花磁器で、藍色の山水桧・花・烏・魚・虫などが描かれた上品な茶器です。ほかには白磁・青磁も有名です。近年は、茶の色・茶葉の様子を見て楽しむためにガラスの茶器がよく使われ、火傷の予防と持ちやすさを考えた二重のガラス杯も出ています。
薬膳茶を飲むときの茶器は自分の好みで選んでよいと思います。中国の茶器は小さいものが多いですが、薬膳茶は量が多いため大きめの茶器をおすすめします。
また、薬膳茶を作るときは煎じるものが多く、中薬のなかには鉄鍋に合わないものもあるので土鍋やステンレス鍋を使います。
ミキサ一も用意しておくとよいでしょう。
参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 辰巳洋著.実用中医薬膳学.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 辰巳洋著.薬膳茶のすべて.株式会社 緑書房,2017
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019