食べ物を飲みこむメカニズムは
①食べ物を認知する
②口の中に入れまとめ、飲みこみやすい形にする
③のどに送る
④ゴックンという嚥下反射がおき、食道へ送る
⑤食道を通り胃に送る
という5段階があります。
水分でむせがおきる原因とは
水分では「②飲みこみやすい形にする」作業は必要としないため、それ以外の過程で飲みこみを行います。
水分を飲みこむ際は、食べ物と異なり、重力に影響しやすく、口に入った瞬間にのどへ流れようとするため、『④ゴックンという嚥下反射がおき、食道へ送る』という動作を素早く行わないといけません。さらに水分はまとまらずに流れてしまうため飲み込みの力も要します。
しかし、脳卒中や加齢などにより嚥下障害が生じた場合、「ゴックンが十分にできない」「ゴックンが遅くなること」により飲みこむ前に気管の方へ近づきムセがおこる、飲み込んだ後にのどに残りそこから気管の方へ近づきむせこむなどが生じます。
水分にトロミをつけるとどうなるの?
水分にとろみをつけることで「さらさら」から「とろとろ」となるため、重力の影響を受けても、のどへ流れる速度がゆっくりとなります。また、とろみをつけることでまとまりやすくなり、そのことにより、「ゴックン」がゆっくりでも飲みこむことができ、むせがおきにくくなります。
※嚥下障害が重症の場合、とろみをつけても誤嚥を防止できないケースがありますので不明な点は、かかりつけ医にご相談下さい。
トロミの段階は?
(日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021を引用)
・薄いとろみ:
スプーンを傾けるとすっと流れ落ちる。
フォークの歯の間から素早く流れ落ちる。
カップを傾け,流れ出た後には,うっすらと跡が残る程度の付着
・中間のとろみ:
スプーンを傾けるととろとろと流れる。
フォークの歯の間からゆっくりと流れ落ちる。
カップを傾け,流れ出た後には,全体にコーテイングしたように付着
・濃いとろみ:
スプーンを傾けても,形状がある程度保たれ、流れにくい。
フォークの歯の間から流れ出ない。
カップを傾けても流れ出ない(ゆっくりと塊となって落ちる)
市販されているトロミ剤は、下の例のように3段階で表記されています。ただし、
「名称」や「使用量」はそれぞれで異なりますので、ご注意ください。
例)
炭酸にトロミをつけれるの?
トロミをつけることは可能です。最近では、インターネットでもつけ方の紹介動画があります。
とろみをつけるため、のどの刺激はやはり少なくなります。炭酸は、あののどの刺激がいいのですが、、
トロミをつけるメリットは?
一番は誤嚥性肺炎を予防が挙げられます。また、むせることで苦しい状況になることを回避でき、より安全に水分を摂取できます。
「とろみがついていると飲みたくない」と思う方もいるかと思います。安全や体への負担を考えると嚥下状況にあわせてとろみを使用することをご検討ください。
水分でムセがあるととろみをつけないといけないの?
私個人の経験でも、軽度の嚥下障害の方がとろみをつけることでムセが減少したケースが多い印象です。しかし、中にはとろみを使用しなくても飲みこみの仕方(一口量・ペース・うなづき嚥下など)を工夫することでとろみなしでもムセなく飲みこみができるケースもあります。この場合は、必ず専門的な評価が必要となるためかかりつけ医へご相談下さい。
以上、とろみをつける理由や段階についてご紹介しました。
その方にとってどのとろみの段階が良いかはかかりつけ医や言語聴覚士の評価を行う事で、細かく設定できます。
最近、水分でむせる方やとろみ剤を使用しようか思っている方はかかりつけ医や言語聴覚士にご相談することをお勧めします。