前回の投稿では、「リハビリテーションとは本当はどういう意味なのか?」をテーマに取り上げました。リハビリテーション(リハビリ)は、医学的・社会的・職業的・教育的の4つの分野に分類されます。この中で、病院において理学療法士が提供するリハビリテーションは、特に医学的リハビリテーションに特化した専門的な取り組みとして実施されています。と述べました。
今回は、医学的リハビリテーションの一分野である病院の理学療法士の役割についてお話ししたいと思います。 「理学療法士さんって何をする人なの?」と聞かれたとき、多くの方はこんなイメージを持つのではないでしょうか。病気やけが、手術などを経験し、体の動きが悪くなった方を支援する「足の専門家」「歩行訓練をする人」「マッサージをする人」「手足のリハビリを行う人」といった印象ではないでしょうか。
理学療法とは
「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています(「理学療法士及び作業療法士法」第2条より引用)
(※基本的動作能力とは、、、寝返り・起き上がり・立ち上がり・座位・立位・歩行・その他の移動動作など能力を指す)
器官 | 病名的変化 | 病名 |
脳 | 出血・塞栓・腫瘍 | 脳出血・脳梗塞・脳腫瘍 |
脊椎・脊髄 |
変形・外傷 | 椎間板ヘルニア・脊髄損傷 |
骨関節 | 変形・外傷 | 変形性膝関節症・大腿骨頸部骨折 |
- 例えば、図のように、器官に病理学的な変化が生じると病気が発生します。 器官としての脳に出血という病理学的変化が起これば「脳出血」となり、脊椎では髄核が突出することで「椎間板ヘルニア」が生じます。
⇩
- 上記の1次障害によって、麻痺や筋力低下、炎症、痛みなどが生じ、その結果、運動制限が発生します。これにより、起き上がりや立ち上がり、座る、歩くといった基本的な動作能力が困難になることがあります。
⇩
- さらに、身体を長期間動かさない状態が続くと、次のような2次的な障害が発生する可能性があります。
①筋力低下
②関節の硬化(拘縮)
③痛みの発生や増加
④心肺機能の低下
このような2次障害は、症状の悪化や回復の遅れにつながるため、早期の対応が重要です。
⇩
- さらに、基本的な動作能力の低下は日常生活動作(ADL)の低下を招きます。
➡これにより、2次障害の予防を含めた理学療法の介入が必要となります。
理学療法の主な治療手段には、運動療法と物理療法があります。これらを通じて、患者さんの身体機能の回復や改善を図ります。また、入院中だけでなく、退院後の生活においても、継続的なサポートを提供します。
【運動療法の目的(治療的運動)】
- 関節可動域の維持・増大
- 筋力や筋持久力の維持・増大
- 協調性の獲得
(神経系と筋肉を連携させ身体のさまざまな部位を調和的に動かす能力)
- 全身の生理的機能の維持・増大
【物理療法の目的】
- 疼痛の改善
- 循環の改善
※物理療法とは温熱療法・寒冷療法・電気療法など物理エネルギーを用いて治療します。
【その他のサポート】
セルフケア:ストレッチや体操、呼吸法 など 筋や関節機能の維持・増大
自主訓練 :筋力増強やバランス訓練 など 身体機能の維持/向上、再発の予防
生活指導 :杖や歩行器などの福祉用具の選び方と正しい使い方を説明し、安全な移動や自立を支援。また、家族へ介助の方法など退院後のサポート
環境調整 :家庭環境を見直し、安全で効率的に過ごせるよう提案(例: 段差を減らす、滑り止めの設置など)
退院支援 :多職種と患者さんが安全で快適な生活を退院後も維持できるよう支えるため社会サービスの調整を実施
まとめ
病院の理学療法士は、医学的リハビリテーションの専門家であり、特に基本的動作の能力の改善を図るために、身体機能の回復や改善を目的とした支援に特化しています。また、リハビリテーションには多職種が関わり、それぞれの専門性を活かして患者さんを包括的にサポートしています。