中医学について
中医学とは中国で発祥し、今日まで伝承されてきた伝統医学で西洋医学とは異なる認識をもっています。陰陽学說、病因学説、気血津液、五臟六腑、経絡などの基礎的な理論に加えて豊富な臨床診断の知識があります。また、治療にはさまざまな食材・中薬(日本でいう生薬(しょうやく))・方剤(調合された漢方)・鍼灸などを用います。隋の時代から、日中両国の文化交流によって日本の医学にも大きな影響を与えています。
中医学では、自然のなかで生活をしている私たちの身体は、季節・気候・地理環境などの影響を受け、「春は温かく、夏は熱く、秋は乾燥し、冬は冷える」というように変化していくと考えます。季節の移り変わりに応じて飲む茶を変えるのは、理にかなっているというわけです。
陰陽学說
陰陽学説とは、古代の人々の自然現象に対する認識や考え方の表れです。
「陰」は曇り、湿気がこもっているという意味で、日射しの当たらないところです。
「陽」は太陽が高く昇って輝き、明るい日射しの当たるところで、はっきりしているという意味です。
このような陰陽の属性から、季節と茶の属性を下記の表にまとめました。
属性 |
宇宙 |
季節 |
方位 |
薬膳茶の性質 |
薬膳茶の分類 |
陰
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地 月
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秋冬
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西北
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涼
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緑茶・白茶・黄茶・青茶 |
陽
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天 日
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春夏
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東南
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温
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黒茶・紅茶
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病因学說―季節の特徵
自然のなかに生活している私たちは、春・梅雨・夏・秋・冬という1年の気候変化により、身体が冷える、熱くなる、だるくなるなど体調が変化していきます。
春になり暖かくなるとともに、身体も冬の冷えた状態から温まっていきます。夏になると、暑さの影響で身体も熱くなり、体温を調節するために皮膚・毛孔が開き、汗が出て熱を発散させ、薄着で過ごします。その間にある梅雨の時期は、雨がよく降り、湿度が高くなることで身体がだるくなります。秋になると徐々に涼しくなり、空気が乾いてくるので、乾燥予防が必要となります。冬になると冷たい空気が流れてくるため、身体が固くなり、皮膚・毛孔がしっかり閉じて保温し、身体を守ります。
このように自我防衛の機能によって、身体は季節に応じて生理機能を調節して体温を一定に維持することで、病気にかからないようになっています。
病気の予防も兼ねて、薬膳茶を飲む場合はそれぞれの季節に病気を引き起こしやすい原因、いわゆる邪気とその特徵を理解する必要がありますので、下記を参照ください。
季節 |
邪気 |
特徵 |
春
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風邪
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身体の上半身と肝を傷めやすい 風邪は春だけでなく1年中あり、よくほかの邪気と一緒に身体に侵入する 病位が移動し、症状が動摇する、非固定性である 病症に変化が多く、進行が速い |
梅雨
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湿邪
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陽気を傷め、気の巡りが悪くなると脾を傷めることが多い 重い症状と不快な症状(皮膚病の分泌物、混濁した尿、泥状便、痰など)を引き起こすとともに疾病からの回復にも時間を要す 下半身に症状が多く現れる |
夏
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暑邪
火邪
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炎熱・上昇・発散で気・血・津液を損傷しやすい 湿邪と一緒に侵入することが多い 心に影響しやすい 炎上の特徵により心の神志を司る働きを乱す 気・津液を傷つけやすい 血を消耗し、筋脈を滋養できなくなり、けいれんの症状を引き起こす 心に影響しやすい |
秋
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燥邪
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乾燥で津液を損傷しやすい 肺を傷つけやすい |
冬
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寒邪
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陽気を傷つけやすく、冷えの症状が現れると特に腎を傷めやすい 気の巡り、血の流れを停滞させ、疼痛の症状を引き起こす 臓腑・経脈・筋肉のけいれんを引き起こす |
参考文献
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 辰巳洋著.実用中医薬膳学.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 辰巳洋著.薬膳茶のすべて.株式会社 緑書房,2017
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019