HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

健康・予防

第八十一回東洋医学療法の紹介コラム64薬膳茶⑬目的別・薬膳茶に使う食薬ー温①

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目的別・薬膳茶に使う食薬     温(おん)

 

 

 

温性・熱性、辛味・甘味などの性味をもつ食薬で、

体表や臓腑を温め、寒邪を取り、臓腑の働きの虚弱による冷え、無気力、疲れなどを改善します。

 

 

辛温解表類(しんおんげひょうるい) 寒気を感じるときに体表を温める

 

風邪のひき始めに出る熱・寒気・鼻水・鼻つまり・頭痛・のどの痛み・身体の痛み・食欲不振などの症状があるときには、辛温解表類の食薬がおすすめです。

ここで紹介する食薬は性質が温性、味が辛味で発散する力が強いため、体表を温めることができます。晚秋から冬・早春の養生にも適した食薬です。

 

 

裏類(おんりるい) 身体の奥を温める

 

 

気温・飲食・環境の要因で臓腑・血脈・骨が冷えて体調が悪くなるため、身体を温めることは重要です。このとき、身体の奥を温める温裏類の食薬を用います。この種類の食薬は香辛料が多く含まれているので、使用量に注意しましょう。 

 

助陽類(じょようるい) 身体を強壮しながら温める

 

 

虚弱体質、加齢とともに臓腑の働きが低下し、体内の陽気が不足して、臓腑から背中や胸の冷痛・動悸・冷汗・腹痛・むくみ・四肢冷感・足腰冷痛・頻尿感・下痢・生理痛・生理不順の冷えや疼痛などの症状が現れます。これらの症状を緩和するのが助陽類の食薬で、虛弱した臓腑を温め、働きを增強し、陽気を補給します。

 

 

 

 

辛温解表類(しんおんげひょうるい)

 

生 姜(しょうきょう)――ショウガ科 性味 温、辛 帰経 肺・脾・胃 常用量 3~9g

期待される効能

  • 解表散(げひょうさん)寒(かん)・温肺止(おんはいし)咳(がい):風寒邪気による悪寒・無汗・頭痛・身体の痛み・咳・白い痰・喘息
  • 温中止嘔(おんちゅうしおう):脾胃虚寒による胃の冷え・痛み・嘔吐・食欲不振

 

紫蘇(しそ)――シソ科 性味 温、辛 帰経 肺・脾 常用量 3~6g

期待される効能

  • 解表散(げひょうさん)寒(かん):風寒邪気による発汗・発熱・咳・痰
  • 行(こう)気(き)寛中(かんちゅう):気滞による胸のつかえ・吐き気・嘔吐・つわり・胎動不安

新鲜な葉を「大葉」とよび、種の「紫蘇子」は咳・白い痰・便秘に使います。

 

桂 枝(けいし)――クスノキ科 性味 温、辛・甘 帰経 心・肺・膀胱 常用量 3~6g

期待される効能

  • 発汗(はっかん)解(げ)肌(き):風寒湿邪気による悪寒・悪風・頭痛・発熱
  • 温通(おんつう)経脈(けいみゃく):関節痛・生理痛・閉経
  • 助陽化(じょようか)気(き):胸陽不振による冷え・動悸・胸と腹部の痛み・めまい・痰

桂枝は樹木の細い枝の部分を使います。肉桂は同じ樹木の樹皮を使いますが効能は異なります。

 

白芷(びゃくし)――ゼリ科 性味 温、辛 帰経 肺・胃・大腸 常用量 3~9g

期待される効能

  • 解表散(げひょうさん)寒(かん)・祛風(きょふう)止痛(しつう):風邪・寒邪による悪寒・頭痛・身体の痛み・歯痛・鼻つまり・鼻水
  • 燥湿止帯(そうしつしたい)・消腫排(しょうしゅはい)膿(のう):寒邪・湿邪によるおりもの・癰腫瘡毒(ようしゅそうどく)(皮膚・乳腺・腸の急性化膿性疾患)

 

香薷(こうじゅ)――シソ科 性味 微温、辛 帰経 肺・脾・胃 常用量 3~6g

期待される効能

  • 発汗(はっかん)解表(げひょう):春の風邪寒邪による悪寒・発熟・無汗・頭痛
  • 化湿(かしつ)和中(わちゅう)・利水消腫(りすいしょうしゅ):湿邪による胸のつかえ・嘔吐・下痢・むくみ・尿量減少

 

 

 

参考文献:

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 辰巳洋著.実用中医薬膳学.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 辰巳洋著.薬膳茶のすべて.株式会社 緑書房,2017
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019

 

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王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

【経歴】
5代続く中医学医師の家庭に生まれ、幼少の頃より家族から中医学の基礎を教わる。
1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒
総合病院中医科中医師(中医総合科)として勤務                       
1997年 熊本大学医学部第二生理学科に入局、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻
2002年 熊本大学大学院医学研究科修士博士連合課程卒 
医学博士取得(西洋医学)
2016年 南京中医薬大学中医学院に入学、中医学臨床基礎・経方(漢方)医学を専攻
2019年 南京中医薬大学博士課程卒
医学博士取得(中医学) 
2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2020年~ 中国河北中医薬大学 客員教授
1999年~ 御幸病院および複数の医療機関に中医師・研究員・講師として勤務

【資格】

・医師(中国国家資格・中医師)
・医学博士(中国・中医学)
・医学博士(日本・西洋医学)
・自然医学療法医師(アメリカ自然医学学会)

【学会役職】

・世界中医薬学会聯合会 経方専業委員会 副会長
・世界中医薬学会聯合会 治未病専門委員会 常務理事
・日本中医協会 副会長