日常にこそ難しさがある
〜「食」の視点から考える健康と感謝〜
先日、俳優・堤真一さんがテレビ番組のインタビューで、「日常にこそ難しさがある」と語っておられました。
この言葉には、何か特別なことを成し遂げるよりも、「ごく普通のことを、普通に続ける」ことのほうがずっと難しく、そして尊いのだという思いが込められているように、私は感じました。
たとえば、日々の食事です。もちろん運動や睡眠も健康維持には欠かせませんが、1日の中で最も頻繁に行っているのは「食べること」ではないでしょうか。
朝食後に軽い筋トレを日課にしているものの、正直言って、あれはほとんど修行のようなもの。体は重く、心の中では「今日くらい休んでも…」と葛藤しています。 それでも続けられているのは、「健康のためにやらなきゃ」という義務感と、やり終えたときのちょっとした達成感があるからです。 |
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だからこそ、「日々の食事」に目を向けることは、健康づくりにおいて最も現実的で、継続しやすい方法なのだと感じています。
私たちは「食べる」という行為をつい無意識にこなしがちですが、「何を食べるか」を少しだけ意識することから、健やかな日常は始まります。
実は私自身、保健師という職業柄、野菜の大切さは理解しているつもりでしたが、実際にはあまり摂れていませんでした。
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行動に変化が生まれたのは、ある健康イベントに参加し、野菜摂取量を測定器で数値として“見える化”したことが、食生活を見直す大きなきっかけとなりました。その結果、想像以上に摂取量が不足していたことが明らかになり、大きなショックを受けました。 しかし、その衝撃こそが日々の食生活を見直す大きな転機となったのです。 |
野菜が苦手な方や、つい後回しにしてしまう方も多いかもしれません。
そんな方は、御幸病院 管理栄養士・田邊史子さんによる
「野菜を摂るのが苦手・面倒な人が野菜を食べる習慣を作る方法」という記事をぜひご覧ください。
日常に無理なく取り入れるためのヒントが、きっと見つかるはずです。
日常の食が、未来を変える投資になる |
私たちがつい手に取りがちな加工食品や嗜好品。その多くには「思わず手が伸びてしまう工夫」が凝らされていると感じることがあります。
高糖質・高脂肪・高塩分の組み合わせは、私たちの脳を強く刺激し、一時的な満足感や幸福感をもたらすとされています。その心地よさから、何度も繰り返し食べたくなってしまうのです。
ファストフードやスナック、清涼飲料などには、“空腹”ではなく“欲望”を刺激する仕掛けが散りばめられています。 これらは栄養価が比較的低く、摂り過ぎると食生活のバランスを崩す原因にもなります。 |
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さらに、濃い味付けに慣れてしまうと、野菜や素材本来の自然な甘みやうま味が物足りなく感じられ、より強い味を求めてしまうという悪循環に陥ることもあります。
このような食品は、摂り方によっては身体に少しずつ影響を及ぼします。
たとえば、糖質の過剰摂取は肥満や糖尿病につながり、アルコールは肝機能への負担、ニコチンは血管への影響、カフェインは睡眠の質に関わることもあります。
社会は今、目まぐるしいスピードで進化しています。
だからこそ、一度立ち止まり、自分の「食生活」を見つめ直すことが大切なのではないでしょうか。
「食べられること」に感謝し、「何を、どう食べるか」を意識して選ぶ。
そんな当たり前のことが、これからの自分をつくる土台になるのです。
そこには、食材への感謝や、愛情を込めて料理をしてくれる人への感謝の気持ちも含まれています。 食事は、単に栄養素だけで成り立っているわけではありません。 |
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バランスの取れた食事を「日常」にするということ |
バランスの取れた食事を心がけること。
野菜・たんぱく質・炭水化物・良質な脂質を適切に取り入れ、栄養の偏りを防ぐこと。
そして何より、感謝の気持ちをもって食事をいただくこと。
これらは一見、誰にでもできる簡単なことのように思えますが、実際には時間や手間、味覚の慣れ、意識の継続といった課題があり、決して容易ではありません。
だからこそ、それを「日常」として根づかせることには、大きな意味があるのです。
俳優・堤真一さんの言葉を借りれば、「日常こそ難しく、何気ない日常は奇跡である」。
日々の生活や食事もまた、その奇跡の積み重ねなのです。
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バランスの取れた食事は、単に健康を保つだけでなく、医療費の削減や仕事・学習のパフォーマンス向上、子どもや家族への良い食習慣の継承にもつながります。 さらに、食材の選び方や食べ方を工夫することで、食品ロスの削減や環境負荷の少ない食材の活用、地産地消の推進などを通じて、地球環境の保全や地域の活性化にも貢献できます。
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そう、「日々の食事は最強の“未来への投資”」なのです。
おわりに |
便利で誘惑の多い現代。気づけば、食べることも選ぶことも、無意識に流されがちです。
だからこそ今、自分の体が本当に喜ぶものを見極め、感謝して食べるという“難しくも尊い日常”を、私たちは取り戻すべき時なのかもしれません。
「日常にこそ難しさがある」――その言葉を胸に、今日という一日を、そして目の前の食事を、少しだけ丁寧に味わってみませんか。