HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

東洋医学の活用

第八十二回東洋医学療法の紹介コラム65薬膳茶⑭目的別・薬膳茶に使う食薬ー温②

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温(おん)裏類(りるい)

 

 

肉桂(にっけい)――クスノキ科

性味 大熱、辛・甘 帰経 腎・脾・心・肝 常用量 1~3g、粉末の場合0.5~1g

 

期待される効能

  • 補(ほ)火(か)助陽(じょよう)・散(さん)寒(かん)止痛(しつう):陽気不足による冷え・むくみ・性欲低下・夜尿が多い・胃腹肢体の冷痛
  • 温通(おんつう)経脈(けいみゃく):腰膝冷痛・胸痛・閉経・生理不順・生理痛
  • 引火帰(いんかき)原(げん):虚陽上浮による顔の赤み・喘息・汗をかきやすい・動悸・不眠・脈弱

 

 

 

乾姜(かんきょう)――ショウガ科

性味 熱、辛 帰経 脾・胃・腎・心・肺 常用量 3~10g

期待される効能

  • 温中散(おんちゅうさん)寒(かん):寒冷による胸腹部の冷えと痛み・嘔吐・水様の下痢
  • 回(かい)陽通脈(ようつうみゃく):心腎陽虚による四肢のひどい冷え・脈微弱・大量の汗
  • 温肺化飲(おんはいかいん):肺寒による咳・喘息・胸背の冷え・疼痛

生(しょう) 姜(きょう)を乾燥したものです。

 

桂(けい) 花(か)――モクセイ科

性味 温、辛・甘 帰経 心・肝・脾・胃 常用量 1~3g

期待される効能

  • 温中散(おんちゅうさん)寒(かん)止痛(しつう):胃腹部の冷え・疼痛・歯痛
  • 理気化痰止(りきかたんし)咳(せき):肺寒の咳・喘息
  • 芳香除(ほうこうじょ)臭(しゅう):口臭

 

小茴(しょううい)香(きょう)――セリ科

性味 温、辛 帰経 肝・肾・脾・胃 常用量 3~8g

期待される効能

  • 散(さん)寒(かん)止痛(しつう):寒邪による痛み・小腹痛睾丸痛·陰部の冷え・生理痛・生理不顺
  • 理(り)気和(きわ)胃(い):胃腹冷痛・腹部の張り・嘔吐・食欲不振

 

 

 

黒砂糖(くろざとう)――イネ科

性味 温、甘 帰経 肝・脾・胃 常用量 好みでよい

期待される効能

  • 温中補(おんちゅうほ)虚(きょ):身体の虚寒による腹痛・胃痛・冷え・下痢
  • 緩急(かんきゅう)止痛(しつう):冷えによる胃腹疼痛・生理痛・産後腹痛
  • 活血化瘀(かっけつかお):冷えによる血流悪化からの生理不順・生理痛

 

 

 

助陽類(じょようるい)

 

 

胡桃(ことう)肉(にく)――クルミ科

性味 温、甘 帰経 腎・肺・大腸 常用量 10~30g

期待される効能

  • 補(ほ)腎(じん)温(おん)肺(はい):腎陽虚による足腰冷痛・だるさ・四肢にカが入らない・めまい・耳鳴り・冷え症
  • 斂肺定喘(れんはいていぜん):肺腎不足による慢性咳・喘息
  • 潤(じゅん)腸通便(ちょうつうべん):高齡者・虚弱者・病後などの大腸の乾燥による便秘

注意

  • 痰熱による喘息、陰虚の熱、泥状~水様便に禁忌。
  • 濃い茶との同服、蕎麦や酢と同用しない。
  • 咳・喘息の改善には種皮をつけたまま用いる。

 

 

 

 

杜(と)仲(ちゅう)――トチュウ科

性味 温、甘 帰経 肝・腎 常用量 3~15g

期待される効能

  • 温補(おんほ)肝腎(かんじん):腎陽虚による腰痛・冷え・性機能低下頻尿·遗尿
  • 強筋(きょうきん)壮(そう)骨(こつ):腰膝のだるさ・無気力
  • 固(こ)経(けい)安胎(あんたい):不正出血・流産

 

肉蓯蓉(にくじゅよう)――ハマウツボ科

性味 温、甘・鹹 帰経 腎・大腸 常用量 6~15g

期待される効能

  • 補(ほ)腎(じん)助陽(じょよう):腎陽虚による腰膝冷痛・インボテンツ・頻尿・尿漏れ
  • 潤(じゅん)腸通便(ちょうつうべん):高齡者・虚弱者・腎気虛の大腸の乾燥による便秘

注意  煎じるときに、銅・鉄器の使用を避ける。

 

淫羊藿(いんようかく)――メギ科

性味 温、辛・甘 帰経 腎・肝 常用量 3~15g

期待される効能

  • 補(ほ)腎(じん)壮(そう)陽(よう):腎陽虚による冷え・無気力・インポテンツ・遺精・頻尿尿失禁,不妊症
  • 祛(きょ)風(ふう)除(じょ)湿(しつ)・強筋(きょうきん)壮(そう)骨(こつ):腰膝冷痛・関節痛・麻痺・運動困難

 

松(まつ)の実(み)(滋(じ)陰(いん)類)――マツ科

性味 温、甘 帰経 肺・肝・大腸 常用量 好みでよい

期待される効能

  • 潤肺止(じゅんはいし)咳(がい):肺の乾燥による咳・皮膚の亁燥
  • 潤(じゅん)腸通便(ちょうつうべん):大腸の乾燥による便秘

注意 油が酸化して傷みやすいので、密閉できる袋に入れて保存する。

 

巴戟天(はてきてん)――アカネ科

性味 微温、辛・甘 帰経 腎・肝 常用量 5~15g

期待される効能

  • 補肾(ほじん)助陽(じょよう):腎陽虚によるインボテンツ・不妊・頻尿
  • 袪風(きょふう)除湿(じょしつ):腎陽虛による腰膝の痛み・だるさ

 

 

 

参考文献:

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 辰巳洋著.実用中医薬膳学.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 辰巳洋著.薬膳茶のすべて.株式会社 緑書房,2017
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019

 

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王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

【経歴】
5代続く中医学医師の家庭に生まれ、幼少の頃より家族から中医学の基礎を教わる。
1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒
総合病院中医科中医師(中医総合科)として勤務                       
1997年 熊本大学医学部第二生理学科に入局、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻
2002年 熊本大学大学院医学研究科修士博士連合課程卒 
医学博士取得(西洋医学)
2016年 南京中医薬大学中医学院に入学、中医学臨床基礎・経方(漢方)医学を専攻
2019年 南京中医薬大学博士課程卒
医学博士取得(中医学) 
2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2020年~ 中国河北中医薬大学 客員教授
1999年~ 御幸病院および複数の医療機関に中医師・研究員・講師として勤務

【資格】

・医師(中国国家資格・中医師)
・医学博士(中国・中医学)
・医学博士(日本・西洋医学)
・自然医学療法医師(アメリカ自然医学学会)

【学会役職】

・世界中医薬学会聯合会 経方専業委員会 副会長
・世界中医薬学会聯合会 治未病専門委員会 常務理事
・日本中医協会 副会長