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医師監修

ついさっきまで、元気だったのに・・。時間が勝負!脳卒中の初期症状と対処法

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ついさっきまで、元気だったのに・・。時間が勝負!脳卒中の初期症状と対処法

 

はじめに

 

みなさん、がん・心不全・脳卒中という病名を、よく聞にしませんか?

実はこの病気は、死因の上位を占めるもので、2023年の人口動態統計では、死因の第1~5位は以下の通りです。

 

 

 

 

 

1位:がん(悪性新生物) 

2位:心不全

3位:老衰

4位:脳卒中(脳血管疾患)

5位:肺炎 

令和5年の主な死因の構成割合

 

脳卒中は、死亡原因の第4位で、さらに寝たきりになってしまう原因の第1位です。また、4人に一人の割合で、生涯に一度は脳卒中を発症すると言われています。

 

 

脳卒中 発生時年齢

 

上記グラフは、脳卒中の病型別発症時年齢を示しています。男女ともに、40歳代から急激に患者数が増えており、働き盛りや子育て世代にもみられる疾患です。決して高齢者の病気ではありません。

 

脳卒中データバンク報告書2021年データ

 

また、発症の男女比は、脳梗塞/脳出血は男性が多い傾向にありますが、くも膜下出血は発症者の約7割が女性です。

「ついさっきまで、元気だったのに・・・。」と、急激な発症を特徴とする脳卒中は、発症の瞬間に、人生がガラリと変化します。それは、家族も同じで、さまざまな生活の変化を余儀なくされます。しかし、適切に初期対応ができれば、後遺症なく社会復帰できる疾患でもあります。たとえ後遺症があっても、適切な治療とリハビリで、後遺症を最小限にとどめ、日常生活を問題なく送っている患者様はたくさんいらっしゃいます。

では、その分かれ道はどこでしょうか? それは、「治療までの時間!」です。

これからお話する内容をぜひ読んでいただき、適切な治療に繋げていただければ幸いです。

 

脳卒中とは

 

脳卒中とは、血管が詰まる「脳梗塞」と、血管が破れる「脳出血」、血管にできた瘤が破れる「クモ膜下出血」に分かれます。さらに、脳梗塞は、細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」、比較的太い血管が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓で出来た血栓が脳の太い血管に詰まる「心原性脳塞栓症」に分かれます。

 

 

 

脳卒中の症状について

 

脳卒中って、どんな症状が思いつきますか??

麻痺でしょ?頭痛でしょ?と、なんとなく症状が思い浮かぶと思います。

脳卒中の症状は多岐にわたります。その理由は、脳の障害部位に応じた症状が出るからです。

これは、私たちの脳を横から見た図です。脳自体は豆腐のように柔らかく、すぐに傷ついてしまいます。脳はとても繊細できれいな臓器なので、頭蓋骨という固い骨と膜で保護されています。

 

脳にはそれぞれ、場所によって役割が決まっていて、障害された部位に応じて、さまざまな症状を呈します。例えば、図のように、前頭葉(脳の前の方)では、麻痺や性格変化 側頭葉では言葉の理解、後頭葉(後ろの方)では目の症状 小脳では平衡感覚の症状など多岐にわたります。

 

 

 

頭痛がない脳卒中もある!!

 

頭痛はどのようなときに見られるのでしょうか?

片頭痛や緊張性頭痛のように脳そのものに疾患がない場合と、脳そのものの損傷により生じる症候性頭痛があります。脳に出血や梗塞でダメージが加わることで、脳圧が亢進し症候性頭痛を引き起こします。特に、頭をハンマーで殴られたような痛みと表現されるように、クモ膜下出血はその代表例です。頭痛に加えて嘔吐をすることもあります。

ただし、出血が少量であったり、脳梗塞の場合は、頭痛がそれほどひどくなかったり、頭痛がなく、手足や言葉の症状だけがでることもあります。

 

 

この図は、病型別救急搬送システムの利用率です。

脳出血やクモ膜下出血が9割近い搬送率であるのに対し、脳梗塞は6割程度の搬送率にとどまっています。激しい頭痛もなく、何かおかしい程度の症状であれば、すぐに救急搬送に至らないのかもしれません。

また、このグラフにはTIAという項目があります。

脳梗塞の症状が出現した後、数分から1時間程度で完全に症状が改善することがあります。

これを、「一過性脳虚血発作(TIA)」と言います。脳梗塞と同じように血栓などが血管につまって症状が出現します。しかし、血栓が小さかったり、自然に溶けて再び血液が流れると症状が消えてしまいます。実は、この一過性脳虚血発作は非常に危険な発作です。症状がでた数日~3か月以内に本格的な脳梗塞を起こすと言われており、症状が消失していても早期に専門の病院を受診しましょう。

 

 

FAST~脳卒中の症状に、早期に気づくために~

 

目の前で家族に異変があった時、すぐにその症状に気が付くことができるでしょうか?

症状がたくさんあってわかりづらいですね。そこで、だれでも脳卒中の初期症状が簡易判断できるように、FASTを確認することが大切です。

 

 

ひとつでも突然これらの症状がでたら脳卒中である可能性は約70%だと言われています。

さらに近年は、BE FASTというものがあります。FASTに以下のBとEの症状を加えることで、より脳卒中の検出率があがります。

B:BALANCE(平衡感覚)突然のめまい ふらつき まっすぐあるけない

E:EYES(目)視野がかける 二重に見える 視力が急に低下する

 

何かおかしいな?脳卒中かな?と思ったら、このFASTの症状を思い出してください。

 

 

症状があれば、迷わず救急車をよびましょう!

 

「ちょっと気になるけど、頭痛もないし、明日、病院に行こう・・」

この思いが分かれ道の始まりです。

脳卒中、特に脳梗塞の治療はゴールデンタイムがあります。「rt-PA」という脳梗塞の原因となる血液のかたまりを溶かす薬は、発症後4.5時間以内しか使用できないという時間制約があります。それを逃さないことが重要です。

 

 

脳卒中の知識を持ち、適切な初期対応と治療につなげていきましょう。

 

脳卒中について分かりやすく説明されていますのでぜひご覧ください。

【脳卒中で入院した方・ご家族にお伝えしたいこと】第1部 脳卒中の治療が始まりました

(出典:一般社団法人日本脳卒中学会、公益社団法人日本脳卒中協会)

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小松 郁美

小松 郁美(こまつ いくみ)

現職:御幸病院 在宅医療部 看護師長

看護師になって18年、ずっと急性期病院の集中治療室や脳神経外科/脳神経内科で働いてきました。結婚・出産を期に一度は第一線から退きましたが、やっぱり看護の世界から離れることができず、心機一転、2024年から在宅医療部の師長として働いています。在宅の患者様やご家族の支援に関わる中で、これまでは分からなかった、たくさんの学びを頂いています。これまで培った知識や技術を生かし、多職種で手を取り合って、あたたかな支援を心掛けています。いつでも気軽にご相談ください。

資格

看護師 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中療養相談士 
両立支援コーディネーター 頭痛ナース養成講座修了 保健師