HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

お薬のはなし

インフルエンザ治療薬を簡単に理解しておきましょう

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はじめに

 

昨年からインフルエンザが猛威をふるっておりましたね。感染のピークは少し過ぎたかもしれませんが、インフルエンザに関しましては毎年のことではありますし、インフルエンザ治療に関して理解を深めてもらっておいてもいいかなと思います。という事で、今月はインフルエンザ治療薬について簡単にまとめておきたいと思います。

最後に、比較表を付けておりますのでご覧ください。

 

さて、現在、抗インフルエンザ薬って何があるかはご存知ですかね?

ぱっと思い浮かぶのはタミフルでしょうか。

以下が薬になります(アビガンは使用に制限がかかっていますので、まず使えません)

 タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ  : ノイラミニダーゼ阻害薬 

        ゾフルーザ         : CAP 依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

(アビガン:RNA ポリメラーゼ阻害薬)

 

そして勘違いをされている人が多いのですが、これらの薬はインフルエンザウイルスをやっつける薬ではありません。私たちの体内に閉じ込める、もしくは体内で増えようとするウイルスを増やさないようにする薬になります。(アビガンは別ですね)

 

では、インフルエンザによる感染の仕方と薬について説明していきます。

 

 

 

インフルエンザウイルスが増える仕組み

 

まずはそもそも論として、インフルエンザウイルスは、ウイルス自身のみで増えることはできません。

ではどうやって増えるか?例えばですが、人の細胞の中のDNAを借りて増えることができます。DNAといわれるとややこしそうですね。でも難しく考える必要はありませんよ。

例えると…

 

 

インフルエンザウイルスが何かをきっかけに私達の体内へ入ってきて、体内の工場(DNA)をウイルスが勝手に借りて、分身をたくさん作っていくといった感じなのです。右の図のように、時間ごとにだんだん増えていき、ウイルス量は48時間で最高値になるようです。

あ、ちなみにインフルエンザにうがいは有効か?否か?ですが、ウイルスは体に付着して30分くらいで体内に入っていくようなので、30分ごとにうがいをすると少しは効果がありそうですが、現実的ではなさそうです。厚労省のインフルエンザ対策ポスターにもうがいの対策は記載されていません。意外に知らない人がいそうかなと、余談でした。

 

また、インフルエンザウイルスは以下のような形です。ここで覚えていて欲しい部分は、

 

「HA:ヘマグルチニン」と、「NA:ノイラミニダーゼ」って場所です。

この二つのギザギザが人にインフルエンザをうつしてしまう原因になります。どういうことか?ですが、ウイルスは人の体にくっついて私達の細胞の中に取り込まれていきます。

その時にウイルスが細胞にくっつくための「のり」みたいな役割をしているのがヘマグルチニンになります。そして人の粘膜の細胞にくっついて、細胞の中に入っていき、そこで人の細胞の中のDNAを使ってインフルエンザウイルスの分身をたくさん作ります。そして細胞から出て行こうとした時に「のり」(ヘマグルチニン)がくっついて邪魔になり、細胞の外に出ることができません。できなければ、せっかく増えたウイルスは外で悪さをすることができないのです。ですので、ヘマグルチニンとその細胞を切り離してくれる役割を持つものが必要で、その役目をするのがノイラミニダーゼになります。

ヘマグルチニンでくっついて、体内で増えて、ノイラミニダーゼで切り離して外にでていく。
(のりでくっついて吸収され、ウイルス製造工場で増えて、はさみで切って外に出ていく)

という流れですね。

 

 

 

インフルエンザの薬はどのような効果なのか

 

では皆さんならウイルスを直接やっつける以外ではどんな薬を作りましょうか?

結論的には、インフルエンザが増えても細胞内に閉じ込めて外に出さないようにしよう!という薬としてノイラミニダーゼを阻害する薬が開発され、抗インフルエンザ薬として現在は一般的になりました。

イメージしやすいように絵を載せますが、ヘマグルチニンがべたべたした「のり」で、ノイラミニダーゼが「はさみ」としてそのはさみを薬によって使えなくしてしまえば・・・

絵のようにウイルスは細胞から出ていけなくなります。私たちの体の中に閉じ込めて、あとは体の中の免疫力(体の中の防衛軍)でウイルスを退治する。というのがノイラミニダーゼ阻害薬という抗インフルエンザ薬の作用機序になります。

 

 

加えてポイントなのは、細胞に入った後にウイルスが最高に増えるのが48時間後でした。最高に増える前として48時間以内に封じ込めないといけないので添付文書(薬の説明書)にもインフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始すること」と記載されています。

そしてウイルスを殺すのではなく、細胞に封じ込めるわけですから、最後は私たちの免疫力で倒さなければいけないのです。ということは、免疫力が少ない患者さんなどは治りが遅くなるかもしれないなという考え方も必要になりますね。

 

 

 

ノイラミニダーゼ阻害薬それぞれの特徴

 

さて、そんなノイラミニダーゼ阻害薬にはタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタがあります。では作用機序以外でこれらの違いは何か?というと、簡単なところでは、飲み薬か、吸入薬か、注射薬かという違いと何日間使用する(飲む、吸う、点滴する)のかの違いがあります。また、4つの中ではリレンザが一番古いです。タミフルが飲み薬(カプセルと顆粒)、吸入薬がリレンザとイナビル、注射薬がラピアクタになります。 5日間のむ必要があるのがタミフル、5日間吸入する必要があるのがリレンザ、1回で投与終了するのが吸入のイナビル、注射のラピアクタって感じです。患者さんの状態に応じて飲み薬や注射、吸入なんてことを考えて医師が処方します。

 
 

薬剤師として軽く考えてみると、一番使い方が難しいのがリレンザの吸入、少しややこしいのがイナビルの吸入、カプセルで飲みにくいのがタミフル(ジェネリックには錠剤があります)、注射で針を刺されるのがラピアクタって感じです、注射が嫌いな私はラピアクタが嫌です。また、1回で投与終了の吸入薬は便利だなと思いますが、その一回がきちんと吸入できていなければ効果がないという事になりますので、ちゃんと吸入できるのか?もしくはできたか?の確認が大事です。

一方、治療だけでなく、タミフル、リレンザ、イナビル(吸入懸濁用を除く)は予防投与も可能となります。予防投与というのは同居の家族とかにインフルエンザ感染者が発生した時に感染しないよう予防的に使用することです。ただし、予防投与に関しては全額負担になりますし、医師が認めた場合になります。また、効果は使い続けている間のみ効きます。

タミフル、リレンザは治療量の半分を7~10日間使用します。イナビルは予防投与に関して少しややこしくて、成人は2容器を1日1回単回投与か1容器を1日1回2日間吸入で、予防期間が7~10日間とされています。

タミフル、リレンザは使い続けている間のみ効果があり、イナビルは1日か2日使用すると7~10日くらい効果が持続しますよということですね。

 

これらの予防投与の対象者に関しては

・高齢者(65歳以上)
・慢性呼吸器疾患さん又は慢性心疾患患者さん
・代謝性疾患患者さん(糖尿病等)
・腎機能障害患者さん

ということになっています。

例えば病院の職員、受験生などに処方されるのは例外的な感じなのです。

 

 

 

もう一つの作用機序の薬、ゾフルーザ

 

さて、ではもう一つのゾフルーザはどこに作用するかといいますと、次の絵の下部分です。

正式な作用機序は「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」といいますが、興味のある人だけ知っておけばいいかなと思いますので、ここでは簡単に話を進めます。

この薬の機序は、ざっくりいうと体内のウイルス増産工場でウイルスを製造するための機械を使えなくするって感じでしょうか。

 

でも元々のウイルスをやっつけるわけではないので、これも細胞に封じ込めて、私たちの免疫力で倒さなければいけないという事になります。

ノイラミニダーゼ阻害薬との違いは(ウイルス製造機械を使えなくするので)ウイルスを増やさないというところでしょう。ただし、インフルエンザ症状が改善されるまでの時間については、大きな差はないとされています。しかし、ウイルス排出期間に関しては、ゾフルーザがタミフルよりも優れた結果を示しています。ですのでインフルエンザに感染してゾフルーザを処方してもらったら、他のインフルエンザの薬より同居している家族など周りにうつす期間を短くできるってことですね。加えて、ゾフルーザは1回飲めば治療終了という薬で便利です。

また、ゾフルーザが特に評価されているのが、B型インフルエンザです。B型患者を対象とした研究で、オセルタミビル(タミフル)より症状の改善が速いことが複数報告されています。他にも健康保険データベース解析では、入院率・肺炎発症率・追加抗インフルエンザ薬の使用率が、ゾフルーザ群で低いことも示されています。こうしたB型インフルエンザへ効果が良いというデータを背景に、日本感染症学会からの2025/26シーズンの提言では「B型インフルエンザにはゾフルーザを第一選択(最初に使う)とすることを推奨」と明記されているんですよ。

 

じゃあ、ゾフルーザがいいじゃん!となりそうですが、問題もあります。

この薬は飲み薬としては薬価が高いのです。飲む量は体重によって異なります。

成人、または12歳以上の子供には、20mg錠を2錠、体重80kg以上の人は20mgを4錠飲むと行くことになります。80kgが分かれ目です。また、12歳未満の子供では、10~20kg未満の子供で10mgを1錠、20~40kg未満の子供は20mgを1錠、40kg以上の子供は20mgを2錠という風になっています。

 

ではこれを薬価に換算すると以下のようになります・・・(ここからの薬価は2025年度)

 

10~20kgの人:10mgを1錠=1535.4円

20~40kgの人:20mgを1錠=2438.8円

40~80kgの人:20mgを2錠=4877.6円

80kg以上の人:20mgを4錠=9755.2円

 

ちなみにタミフルは189.4円/カプセル なので、1日2回を5日分とすると1894円になります。タミフルのジェネリックだと5日間1160円で済みます。タミフル等に比べると非常に高いなという事がわかるかなと思います。ちなみにラピアクタは1袋6197円なので、体重80kg未満だとゾフルーザより高くなります。

経済的な面や効果の面、そして患者背景、今回説明はしませんが腎機能の面など色々考えて患者さんに合う薬を選ぶことが大事になりますね。

その他にも、治療や予防に関して使用することで耐性ウイルスが作られやすいとのデータもありますよ・・・。

 

ちなみに、ゾフルーザでも予防投与は可能です。1回の投与量は同じで10日間効果を示すようです。ただしこちらも保険適応はありませんので全額自己負担になります。

 

 

 

まとめ

 

さて、抗インフルエンザ薬について大まかにまとめてみました。2026年1月現在、2月以降に流行るのかどうなるのか分かりませんが、今後の為に基本的な部分だけでも理解しておくのは大事だと思いますので最後に一覧表を付けておきます。

 

薬剤師としては、インフルエンザ患者さんに対し、入院なのか、外来なのか、嚥下機能・吸入力・認知機能の低下はないか、介助が必要なのかどうか、腎機能の低下はないか、そういった患者さんの状況をきちんと把握して薬を選びたいのです。ですので、色んなスタッフからその患者さんの様々な情報や評価をいただいて、患者さん個々の治療に関わっていけたらなぁと思います。

そして大事なのは感染しない・させない事ですので、標準予防策(感染症の予防に必要な基本的な対策)もしっかり行う必要があります。

見えない敵に対し、皆さんでやれるところから対策していきましょう!!

 

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森 直樹

森 直樹(もり なおき)

現職:御幸病院 薬局主任

薬剤師になり約20年ほど高齢者の薬物療法に携わってきました。2023年から御幸病院へ入職し現在に至ります。病院外の活動としては、熊本県薬剤師会代議員、熊本県病院薬剤師会理事、医療法人協会薬局長会の会長など務めさせていただいております。飲むことも難しい高齢の患者さんに薬剤師としての寄り添い方を日々考えながら仕事に取り組んでいます。薬のことで困ったことがあればぜひご相談ください。

資格

薬剤師、医療環境管理士、日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師、医薬品安全性専門薬剤師