発熱の原因検索はどのように行うのか?

コロナ感染症のパンデミック以降、発熱で医療機関を受診すると、コロナやインフルエンザの抗原検査が実施されることが一般的になりました。その結果、陰性であれば「解熱剤を処方します」と説明されることが多く、「では発熱の原因は何なのか」と疑問に思われる方もおられると思います。
発熱の原因は、血液検査(末梢血血球分画)で比較的簡単に推測することができます。白血球は感染防御や免疫に関わる血液細胞であり、自動血球計数機により、好酸球・好塩基球・好中球・単球・リンパ球の5種類に分類されます。これらの増減を確認することで、発熱の原因を推測することができます。
顆粒球は細胞質内に特異顆粒を持つ免疫細胞で、ヘマトキシリン・エオジン染色で赤く染まる好酸球、青紫色に染まる好塩基球、染色されない顆粒を持つ好中球に分類されます。リトマス試験紙が酸で赤、アルカリで青に変化することを思い浮かべると、これらの名称を覚えやすくなります。
アレルギーでは、肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンが放出されます。ヒスタミンには血管拡張作用があり、皮膚の赤み(発赤)や、血管外へ水分が漏れ出すことで生じる膨疹(ぼうしん)が現れ、蕁麻疹と診断されます。また、ヒスタミンが知覚神経を刺激することで「かゆみ」が生じるため、抗ヒスタミン薬が処方されます。
好酸球はヒスタミンを不活化し、アレルギー反応を制御する働きがあります。そのため、アレルギー疾患(気管支喘息など)では好酸球が増加することがあります。一方、好塩基球はアレルギー反応の発症に関わり、その顆粒にはヒスタミンが含まれています。アレルギーによる発熱は、多くの場合38℃以下の微熱です。
細菌感染症による発熱では、好中球が増加します。好中球は細菌を取り込み(貪食)、殺菌する免疫細胞です。好中球増加は細菌感染症を示唆するため、抗生物質の内服が必要となる場合があります。また、細菌感染症ではリンパ球が減少することが多く、好中球増加・リンパ球減少は重要な所見です。
組織中にはマクロファージが存在し、細菌やウイルス、死んだ細胞などを取り込む貪食作用を持ちます。細菌感染症では初期段階で殺菌を行います。血液中の単球が組織へ移行するとマクロファージに分化します。単球が増加している場合、マクロファージの活性化が起きていることが考えられます。一方、ウイルス感染初期にはリンパ球が増加し、その後正常に戻ります。
免疫細胞はどのように連絡を取り合うのか?
人間がスマートフォンで連絡を取り合うように、免疫細胞も互いに情報を伝え合っています。免疫細胞は サイトカイン(cytokine) と呼ばれる物質を分泌し、細胞間の情報伝達を行います。
ギリシャ語で cyto=細胞、kine=運動 を意味します。
サイトカインの一種である インターロイキン(IL) は、白血球間の情報伝達を担う重要な物質で、現在38種類が同定されています。
免疫細胞が特定の場所へ移動することを「遊走(ゆうそう)」と呼びます。
・好酸球の遊走因子:IL-5
・好中球の遊走因子:IL-8
・単球の遊走因子:IL-6
それぞれのインターロイキンの受容体を持つ細胞だけが炎症部位へ移動するという、合理的な仕組みになっています。
また、ケモカイン(chemokine) は走化性サイトカインの略で、免疫細胞の移動を制御する物質です。50種類以上が同定されています。
サイトカインは細胞分化にも重要な役割を果たす
細胞分化とは、細胞が異なる役割を持つ細胞へと変化していく現象です。
例えば IL-2 はリンパ球の分化に重要な役割を果たします。
骨髄で産生されたリンパ球は胸腺へ移動し、自己の組織適合性抗原を認識するための教育を受け、成熟した T細胞※1 となります。T細胞は異物を認識し排除する役割を持ち、これを 細胞性免疫 と呼びます。
一方、骨髄で分化・成熟したリンパ球は B細胞※2 と呼ばれ、形質細胞へ分化して抗体を産生します。これを 液性免疫 と呼びます。
異物を認識したT細胞はIL-2を産生し、B細胞を形質細胞へ分化誘導して抗体産生を開始します。このように、サイトカインは免疫反応の調節において重要な役割を担っています。
※1: 「T」は「Thymus: 胸腺」で教育を受けたリンパ球という意味です。
※2: 「B」は「Bone marrow: 骨髄」で分化した細胞という意味です。






