HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

お薬のはなし

安心をひとつ増やすために。健康を支える肺炎球菌ワクチンのお話

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皆さん、お疲れ様です。

今回は2026年4月から定期接種ワクチンの種類が変更になった「肺炎球菌ワクチン」について書いてみたいと思います。

さて、では何が変更になったのかといいますと・・・

2026年4月から

ニューモバックスNP(PPSV23:23価莢膜多糖体ワクチンから

プレベナー20(PCV20:20価結合型ワクチン)

に変更されました。…名前と()の中だけみると、なんか難しそうですかね…。今回はできるだけ簡単に書いてみようと思います。

まずは 肺炎球菌について記載します。

 

肺炎球菌とは

 

 

肺炎球菌とは肺炎や敗血症(感染症による炎症が全身に及ぶもの)、髄膜炎(脳や脊髄を包む髄膜の炎症)など重症化して命にかかわるような病気を引き起こす細菌です。特に高齢者は免疫力(体内で病原菌と戦う力)が低下しているため、感染すると重症化しやすいです。

ですので、皆さんのお父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、身近な高齢者を感染から守るための手段として、肺炎球菌ワクチンという方法がありますのでワクチンの存在を知っていただければ幸いです。

 

 

肺炎球菌ワクチンとは

 

 

では、肺炎球菌ワクチンとは?ですが、「体に“肺炎球菌というバイ菌の顔写真”を覚えさせ、実物が来たときにやっつけたり捕まえられるようにする」というものになります。

肺炎球菌という犯人が体に侵入してきて、体内の免疫細胞という警察官が犯人を捕まえるというイメージで話を進めましょう。では肺炎球菌ワクチンは何か?というと、「犯人の指名手配写真」のようなものです。なので、ワクチンを接種すると、免疫細胞(警察官)が「この顔のやつが来たらすぐに捕まえよう」と準備を始め、体の中に記憶細胞が作られます。これは、警察官が「この犯人の顔は覚えたぞ」と記憶しておく状態になります。そして実際に肺炎球菌(本物の犯人)が体に侵入したときは、すでに顔を知っているので、すぐに対処できるようになるという感じです。

そんなうまくいくかな?と思う人もいらっしゃるでしょう。

もちろん、ワクチンを接種したから完璧だというわけではないです。警察官(個々の免疫細胞)自体が若いのか、歳をとっているのか、元気なのか、優秀なのかなどによっても変わりますし、取り逃がすこともあると思います。

完璧ではないにしても、肺炎球菌性肺炎の発症を約30%減らしますよとか、スペインのデータでは接種しないと肺炎球菌感染症での死亡するリスクが2倍になりますよというデータがあります。またもう一つの利点として感染しても重症化を防ぐという効果もあります。これは、犯人が侵入しても、ワクチンを接種しておくことで警察官(免疫細胞)がすぐに動けるので、大事件(重症化)になる前に取り押さえられるってイメージです。

ということで、肺炎球菌が体に入ってきて悪さをする前にワクチンを接種して、やっつけたり捕まえる準備をしておきましょう!という予防治療が肺炎球菌ワクチンになります。

 

 

肺炎球菌ワクチンの種類による違い

 

さて、ではニューモバックスとプレベナーの違いについても書いていきますね。

ニューモバックス(PPSV23) : (肺炎球菌)多糖体ワクチン

プレベナー20(PCV20)    : (肺炎球菌)結合型ワクチン

多糖体か、結合型かの違いです。

PPSVとはPneumococcal Polysaccharide Vaccine:肺炎球菌多糖体ワクチン

PCVとは Pneumococcal Conjugate Vaccine:肺炎球菌結合型ワクチン 

多糖体に比べ結合型の方が免疫は強くつきやすく、記憶が長持ちしやすい。が結論です。

 

ではなぜか?

 

まず、どちらのワクチンも「肺炎球菌の顔写真を覚えさせる」という基本の仕組みは同じです。以下が違いについてのシンプルな説明です。

 

ニューモバックス(PPSV23):多糖体ワクチン→ 23人分の“顔写真だけ”の指名手配書

プレベナー20(PCV20)  :結合型ワクチン→ 20人分の“顔写真+名前+特徴つき”

の指名手配書

もう少し説明を加えましょう。

 

多糖体ワクチンであるニューモバックス(PPSV23)は「顔写真だけの指名手配書」

で覚えらえるけど情報量が少なく時間がたつと忘れやすいという欠点があります。要するに予防効果の期間が短いのです。

結合型ワクチンであるプレベナー20(PCV20)は「顔写真+名前+特徴つきの指名手配書」で覚えやすく情報が多いので忘れにくいという感じです。要するに予防効果の持続期間が長いということです。

 

 

加えてもう一つ、PPSV23とかPCV20とかの数字は何か?ですが、ワクチンがカバーしている肺炎球菌の血清型(タイプ)の種類数を表します。

そもそも肺炎球菌の多くは莢膜(きょうまく)という膜を持っていて、これが病原性の主体(顔みたいなもの)となります。莢膜には100種類以上のタイプ(顔つきの違い)があって、これが肺炎球菌の血清型と一般的には呼ばれています。つまり、PCV20は20種類の血清型に対応、PPSV23は23種類の血清型に対応していますよという意味です。

 

100以上あるのに、20とか23とか少ないのでは?と思うかもしれません。ただ、全ての型が重大な悪さをするわけでもないので、100以上の型の中から重症化しやすい型(凶悪犯)・よく流行する型(常習犯) をワクチンで予防するってことです。

 

 

じゃあ、23の方が多くカバーしているからいいじゃん!って思う人もいることでしょう。確かにカバーできる数は多い方がいいのですが、ニューモバックス(PPSV23)は多糖体ワクチンで、顔写真のみの手配書みたいなものなので、時間がたつと忘れられてしまいます。一方でプレベナー(PCV20)は顔写真に加え名前や特徴つきの指名手配書なので時間がたっても忘れにくい(効果の持続時間が長い)ので質が良いということになりますね。また、プレベナーは現在の日本で成人の重症感染を起こしやすい型(凶悪犯)を重点的にカバーしています。数が多ければよいということでもないのです。ということで、現段階では、型に関してもニューモバックスよりは質が良いということになりますね。

ということで、最近は「まずプレベナー(PCV20)でしっかり予防の準備をしましょう」 

という方が推奨されるようになったので、2026年4月からの定期接種がニューモバックスからプレベナーに変更になったということになります。

 

さらに、この前まで結合型ワクチンは「一度接種すると効果が一生続くよ」と言われておりました。でも4月1日に感染関連の学会からでた「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版 2026年4月1日改訂)」では「一生有効」とは言えなくてどのくらい効果が長いのかははっきりわからないって見解になっています。製薬会社のデータでは5年は効果があるとのことですが。今後のデータに期待しましょう。

 

 

キャップバックスという新しいワクチン

 

ちなみにもう一つ、キャップバックスという新しいワクチンもあります。

キャップバックス(PCV21)は、21価の結合型ワクチンで、プレベナー20に含まれない 8つの血清型(15A, 15C, 16F, 23A, 23B, 24F, 31, 35B)が追加されています。これらは 近年の日本の高齢者で実際に増えている流行型で、成人の重症肺炎の原因として重要視されている型になります。キャップバックスは21価で、プレベナー20とは1つしか数的には変わらないのですが、近年の凶悪犯の指名手配書を増やした的な感じですね。

じゃあプレベナーの質が悪いのか?と思う人もいるかもですが、プレベナーは子供の定期接種で使われてきた型をベースに進化してきました。その結果、社会全体で菌が減り、今では高齢者の原因になりにくい型も含まれているようです。キャップバックスは、そうした「今では高齢者の原因になりにくい型(1, 4, 5, 6B, 9V, 14, 18C, 19F, 23Fなど)」をあえて削除して、その代わりに、現在の日本の高齢者が実際に感染している「最新の流行型」を大量に追加しているそうです。

 

 

日本の高齢者(65歳以上)の重症肺炎の原因菌をどれだけカバーできているかという最新の予測値ではプレベナーが50〜60%で、キャップバックスは80%以上といわれています。

いまのところ(2026年6月現在) 公費は使えず全額自費になりますが、「一生に一度なら、最もカバー率が高いものを」という人には、医学的に非常に合理的な選択かもしれません。また、もしかしたら来年度以降は定期接種のワクチンがプレベナーからキャップバックスへ変更になるかもしれませんね。

 

まぁ、どちらにせよ、重症化する可能性のある肺炎球菌感染症への備えとして肺炎球菌ワクチンで予防しておきませんか?という話でした。最後に当院で使用可能な肺炎球菌ワクチンのまとめを載せておきます。

皆様へ何かのお役に立てれば幸いです。

 

 

商品名 莢膜多糖体ワクチン
ニューモバックス
結合型ワクチン
プレベナー キャップバックス
カバーする血清型 23価 (PPSV23) 13価 (PCV13)
20価 (PCV20)
21価 (PCV21)
公費 (定期接種) 2026年3月まで 2026年4月から 任意接種のみ
一般的な接種費用 (自費の場合) 9000円位 12000円位 15000円位
投与方法 筋注、皮下注 筋注
(6歳未満は皮下可)
筋注
ワクチンの構造 莢膜の糖のみ 莢膜の糖+キャリアタンパク質
免疫の付き方 B細胞のみ活性化
(T細胞非依存型)
T細胞とB細胞の両方が活性化
(T細胞依存型)
免疫記憶 形成されない メモリーB細胞が形成される
効果の持続 約5年 (徐々に低下) 一生続く?
再接種 5年ごとに必要 1回で完了

定期接種していない:プレベナー(定期接種)かキャップバックス(任意接種)
ニューモバックスを1回以上:プレベナーかキャップバックス(ともに接種1年後に任意接種)
プレベナー13やバクニュバンスを1回以上:キャップバックス(接種1年後に任意接種)
プレベナー20を接種後:基本は不要だがキャップバックスは理論上あり(接種1年後に任意接種)

2026.04.30現在 薬局 森

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森 直樹

森 直樹(もり なおき)

現職:御幸病院 薬局主任

薬剤師になり約20年ほど高齢者の薬物療法に携わってきました。2023年から御幸病院へ入職し現在に至ります。病院外の活動としては、熊本県薬剤師会代議員、熊本県病院薬剤師会理事、医療法人協会薬局長会の会長など務めさせていただいております。飲むことも難しい高齢の患者さんに薬剤師としての寄り添い方を日々考えながら仕事に取り組んでいます。薬のことで困ったことがあればぜひご相談ください。

資格

薬剤師、医療環境管理士、日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師、医薬品安全性専門薬剤師