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質素なのに栄養抜群!日本の伝統的な保存食がもたらす効果や栄養素

伝統的な保存食って!

   

皆様は日頃より、ぬか漬けの漬物、梅干し、魚の干物などは食卓にあがっていますでしょうか。最近では、このような保存食が食卓にあがる機会が減っていると聴いております。しかし、日本の伝統的な保存食は質素でも栄養抜群、そして旨味成分などが含まれていることから、上手に取り入れることで日々の食事が楽しく、そして何よりも美味しいものになりますので、料理のレシピに悩まれているのであれば、今一度、日本の保存食を振り返ってみて、料理のレパートリーを増やしてみてはいかがでしょうか。

今回は日本の伝統的な保存食に関する基礎知識、もたらす効果や栄養素、取り入れる時の注意点についてお話します。

 

日本の伝統的な保存食に関する基礎知識

はじめに日本の伝統的な保存食に関する基礎知識についてご説明をいたします。

日本の伝統的な保存食とは

日本の伝統的な保存食とは、冷蔵庫や電子レンジ等が普及をした現代的な生活ができるようになる前の日本で親しまれてきた食事であり、少しでも長く日持ちするように、そして美味しく食べられるように工夫がされた食品や食材をさします。主に乾燥させて長持ちさせたり、塩を使ったりすることで、微生物や雑菌の繁殖を防いでいました。乾燥させたものを水で戻してさらに加工してみたり、1つの食材から様々な料理を作ったりするなど、日本が昔から食に対する意識が高かったことを示していると言えます。

日本の伝統的な保存食は地域ごとの特色が現れやすくなっていることから、特定の地域で生まれたもの、土地の名産と言える食材を上手に加工したものなど様々です。また、昆布や味噌のグルタミン酸、干ししいたけのグアニル酸、煮干しや鰹節のイノシン酸など、保存のしやすさとともに旨味成分が凝縮されている食材もたくさんあります。そのため、日本の伝統的な保存食は、自然由来のおいしさを堪能できるようになっているのです。

熊本でも、阿蘇地域の高菜漬けを代表として、鮎の甘露煮・このしろ寿司・豆腐の味噌漬け・もろみ味噌・シャク味噌・巻柿・柚菓子など様々な伝統的保存食があります。現代も昔ながらの味が受け継がれ、熊本の食卓を彩っています。

 

日本の伝統的な保存食が生まれた背景

日本の伝統的な保存が生まれた背景には、昔は流通経路や冷蔵及び冷凍など保存方法が充実していなかったこと、季節ごとに取れる野菜や海産物が限られていたことなどが挙げられます。現代においては日本国内のほとんどで季節を問わず様々なものが食べられますが、流通経路がしっかりとしていること、ビニールハウスなども含めて様々な栽培方法が確立したこと、冷凍や冷蔵の技術が発達したことで実現しているのであり、これらのすべてが昔はなかったということです。

そのため、地産地消として自分たちで育てたものや穫ってきたものを上手に加工し、少しでも日持ちをさせながら日々の食事を豊かにするための工夫が行われてきました。そして現代においても継承されているものの中には、生きるために必要な栄養素が含まれているとともに、旨味成分なども含んでいるものもあるため、必然的に質素だけれども美味しいと思えるものが残るようになったと言えます。

 

代表的な保存食の加工方法と主な組み合わせ

  • 乾燥させる
  • 塩を使う
  • 砂糖を使う
  • 燻製する
  • 漬物にする
  • 発酵させる
  • 煮込む

上記が代表的な保存食の加工方法の一例です。主に食材を腐らせないための加工方法であり、それぞれを組み合わせながら様々な食材を少しでも長く食べられるようにする工夫と言えます。基本的には乾燥させることで食材から水分を抜いて長持ちさせること、塩漬けや発酵などによって食材がすぐに腐らないようにすることに昔から注力されてきたと言えるでしょう。

  • 塩+乾燥
  • 塩+漬物
  • 蒸す+乾燥
  • 煮込む+乾燥
  • 燻製+乾燥
  • 砂糖+煮込む

上記が代表的な保存食の加工方法と主な組み合わせの一例です。

 

加工方法の組み合わせ方においても、食材ごとに塩漬け、蒸す、煮込む、燻製するなどを経て、最終的に乾燥させるのが一番多い組み合わせだったと言えます。また、保存食とは言っても必ずしも長期期間保存できるものばかりではありませんでした。加工している間は腐らない、加工後はすぐに食べると言ったようなものもあるため、完全に乾燥させるようなタイプでないものは現代においても日持ちがしないものがあるので注意しましょう。

 

日本の伝統的な保存食品がもたらす効果や栄養素

次に日本の伝統的な保存食品がもたらす効果や栄養素について解説します。

乾燥させる

  • ひじき(食物繊維・カルシウム・鉄・マグネシウム)
  • 昆布(食物繊維・ヨウ素・カルシウム・グルタミン酸)
  • 海苔(食物繊維・ビタミンC・ビタミンB1、B2・たんぱく質)
  • 干し椎茸(食物繊維・ビタミンD・グアニル酸)
  • 切り干し大根(食物繊維・カルシウム・カリウム・鉄分・グルタミン酸)
  • 干し柿(炭水化物・食物繊維・カリウム・マンガン・タンニン) 
  • 魚の干物(EPA・DHA・カリウム・カルシウム・グルタミン酸・イノシン酸)

上記が乾燥させるタイプの保存食品の一例と主な栄養素です。干し柿を除いてはほとんどが完全に水分を抜くために乾燥させている食材ばかりであり、質素で地味に見えても食物繊維や鉄、マグネシウム、カルシウムなどが含まれていることが分かります。また、食材によってはグルタミン酸やグアニル酸が含まれていることから、日本の伝統料理が美味しい理由として根底には旨味成分がそれを支えていたということになります。

 

蒸す+乾燥

  • お餅(炭水化物・食物繊維)
  • 干し芋(食物繊維、ビタミンB群、カリウム)
  • 蒸し栗(炭水化物・食物繊維・ビタミンB1・カリウム) 

上記が蒸してから乾燥させるタイプの保存食品の一例と主な栄養素です。昔はお餅自体、貴重なものでしたが、現代においては誰でも食べられる食材であり、開封前であればかなりの期間長持ちさせることができます。干し芋や蒸し栗は砂糖がなかなか手に入らなかった時代においては、希少な甘味であったと言えるでしょう。

 

発酵・塩+漬物

  • 納豆(たんぱく質・ビタミンK2・ナットウキナーゼ・食物繊維)
  • 味噌(たんぱく質・ビタミンB群・乳酸菌・グルタミン酸)
  • ぬか漬け(ビタミンB1・植物性乳酸菌・食物繊維)
  • 白菜の漬物(植物性乳酸菌・ビタミンC・食物繊維・グルタミン酸) 

上記が発酵や塩で漬物にするタイプの保存食品の一例と主な栄養素です。納豆自体は必ずしも日持ちするとは言えませんが、乾燥させた大豆を加工して発酵させるという流れが、その期間腐らずに保管できると捉えることもできます。ぬか漬けや白菜の漬物も同様であり、美味しく食べられるようになるまで腐らない加工方法であること、また味噌を使った味噌漬けなどにおいても、食材を問わず腐らせずに美味しくなるように工夫してきたことも日本の伝統と言えるでしょう。

 

煮込む+乾燥

  • 車麩(たんぱく質・グルタミン酸)
  • 高野豆腐(たんぱく質・カルシウム・鉄・食物繊維)
  • 煮干し(たんぱく質・カルシウム・イノシン酸)
  • 湯葉(たんぱく質・カルシウム・イソフラボン)
  • 寒天(食物繊維・カルシウム) 

上記が煮込んで乾燥させるタイプの保存食品の一例と主な栄養素です。乾燥されており、タンパク質が豊富なものが多いです。また、カルシウムが含まれているものやミネラルも豊富であることから、適切に摂取することで、不足しがちな栄養素を補うことにつながるでしょう。

 

塩+乾燥

  • 海産物の干物(たんぱく質・DHA・EPA・カルシウム・ビタミンD)
  • 梅干し(クエン酸) 

上記が塩+乾燥させるタイプの保存食品の一例と主な栄養素です。塩鮭やアジの開き、イカの一夜干しなどの海産物の干物は海側の地域で伝統的に作られてきた保存食であり、天日干しをすることなどによって微生物の発生を抑えたり、腐りにくくしたりする工夫がされている食材と言えます。梅干しも昔から親しまれている保存食であり、クエン酸が含まれていますので、食材の一つとして取り入れてみても良いでしょう。

 

煮込む+燻製+発酵+乾燥

  • 鰹節(たんぱく質・イノシン酸) 

上記が様々な工程を経て作られるタイプの保存食品と主な栄養素です。煮干しと同様にイノシン酸が含まれており、昆布や味噌と相性がよく、美味しい料理を作るのに欠かせない存在と言えます。鰹節は日本の伝統的な保存食の加工方法のほとんどが詰め込まれているような食材であることから、やはり昔から日本人の食に対するこだわりが強いことが示されていると言えるでしょう。

 

砂糖+煮込む

  • 羊羹(炭水化物・食物繊維)
  • 栗きんとん(炭水化物・食物繊維)
  • 芋ようかん(炭水化物・食物繊維・ビタミンC) 

上記が砂糖で煮込むタイプの保存食品の一例と主な栄養素です。砂糖で煮込むタイプにおいては、昔からの伝統的な保存食であるとは断言できないものの、おせち料理や甘味の代表的なものとして長く親しまれてきたことが伺える食材と言えます。また、羊羹については現代の技術ではかなり長持ちするように作ることができるため、災害に備えた備蓄としても優秀な食材です。それぞれが炭水化物、すなわち糖質が豊富でエネルギーになりやすい食材というのも特徴と言えるでしょう。

 

日本の伝統的な保存食を取り入れる時の注意点

次に日本の伝統的な保存食を取り入れる時の注意点について解説します。

 

アレルギーや塩分の摂りすぎに注意

日本の伝統的な保存食を取り入れる時の注意点として、アレルギーや塩分の摂りすぎに注意が必要です。例えば魚の干物などは加工する場所によってはエビやカニなどのアレルギーに注意する必要がありますし、加工方法によって何らかのアレルギー物質が入るということを事前に調べておくことが大切です。

また、少しでも日持ちさせるため、もしくは水分を抜くために塩を多く使っている保存食もあるため、食べ過ぎには注意が必要です。特に干物や浅漬けなどに醤油をかけて召し上がる方も少なくないでしょう。塩分はほどほどにするということも大事になります。同様に塩抜きできるものは塩抜きをするなどして、塩分の調整ができるようにしましょう。

 

保存方法や日持ちの違い

日本の伝統的な保存食を取り入れる時の注意点として、保存方法や日持ちの違いが挙げられます。例えば、冷蔵や冷凍、常温、暗所での保存など保存食ごとに適した保存方法を確認するようにしましょう。

また、保存食によってはイメージ的に長持ちしそうだと考えてしまうこともあるかもしれません。例えば干物や梅干しはとても長持ちしそうな感じがしますが、しっかりと賞味期限や消費期限を確認していただき、早めに食べていただくことが大事です。発酵食品である納豆も、日持ちさせるための発酵ではありませんので、しっかり期限内に食べましょう。

同様に完全に乾燥しているような保存食においても、開封した後は劣化するということを忘れず、早めに使い切れるような量を購入時に考えるようにすると良いでしょう。

 

手作りする際の衛生管理

日本の伝統的な保存食を取り入れる時の注意点として、手作りする際の衛生管理が挙げられます。例えば、ぬか漬けや塩漬けにする際、発酵や塩だから大丈夫だと安易に考えてしまうと、思わぬ食中毒を引き起こしてしまうことを留意しておくべきです。

また、漬物の場合は漬けている間は長期保存ができるという加工方法ではありません。きちんとした衛生管理や温度管理などをしていたとしても、放置していたものを食べてしまったり、いつ頃のものかわからないものを食べないように十分な配慮が必要になります。

 

まとめ

今回は日本の伝統的な保存食に関する基礎知識、日本の伝統的な保存食品がもたらす効果や栄養素、日本の伝統的な保存食を取り入れる時の注意点についてお話しました。

日本の伝統的な保存食は現代においても、健康的な生活をするために役立つ存在です。質素でも飽きのこない保存食を日々の食事に少しずつ取り入れていくことで、食事の楽しみと健康な体の両方を手に入れることにつながっていくでしょう。

注意点としての塩分の摂りすぎや正しい保存方法をしっかりと確認をして、安全で美味しい食生活への活用を心がけるようにしてみてください。

 

入江 ともみ

入江 ともみ(いりえ ともみ)

現職:ぼたん園 栄養管理課
主任代行

ぼたん園で管理栄養士として勤務しております。
病院での経験を15年経て、2023年度よりぼたん園にて介護現場におけるケア支援に携わっています。
ご利用者様の在宅生活への復帰を支援するべく適切な栄養管理に努めつつ、安全に楽しんで食べていただける食事提供を心がけております。

資格

管理栄養士、栄養士

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